階段昇段と矢状面膝関節運動力学動態
古本 太希 友成 健 泊 綾音 川村 由佳 岡久 哲也 山田 めぐみ 松浦 哲也
理学療法ジャーナルVol.58 No.5 2024.5 p574-579
・健常者における昇段時の膝関節屈曲角度、関節モーメント
・人口膝関節全置換術(TKA)患者の昇段時の膝関節の運動力学的な特性
・昇段と降段時の要求される膝関節機能の違い
階段や段差の昇降は臨床場面でも関わることが多い動作の1つである。階段昇段時における膝関節の運動力学動態から、昇段時に必要とされる膝関節の機能、人工膝関節全置換術(TKA)患者の動作の特徴、また、降段時との違いについて筆者らの研究をもとに解説している。
昇段の機能的役割は立脚期の下肢の伸筋群による体重の前上方移動と、遊脚期の屈筋群の素早い下肢関節の屈曲運動により、次の段の踏み板に接地すること。
また、降段の役割は身体の下降制御。筆者らの研究から健常者では昇段では膝関節屈曲60~80°、0.8~1.0Nm/kgの内部膝関節伸展モーメント、降段時には膝関節屈曲80~100°、1.0~1.2Nm/kgの内部膝関節伸展モーメントが必要であるとされている。
関節モーメントや関節パワーといった運動学、運動力学の用語を使い解説されている。本稿でもはじめに各用語について整理されており、内容を読む前に言葉の意味を再度理解しておくことが望まれる。
本稿では、階段昇段、降段における膝関節の機能について、必要な膝関節の可動域、伸展モーメントも研究結果から述べている。また、TKA患者の昇段動作の特性から、動作再建のために必要な考え方を述べている。
昇段、降段ともに膝関節が大きな役割を担っていることが分かる。ともに膝関節の屈曲可動域や膝伸展モーメントの発揮が必要であるが、それぞれの役割、大腿四頭筋の収縮様式は異なるため、それらを理解し、階段の昇降動作への評価、アプローチが重要である。
記事:ながちゃん