口腔問題がリハビリテーションに与える影響と対策

(20211116完全版限定配信)

口腔問題がリハビリテーションに与える影響と対策


上田有紀人,百崎良


JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第30巻・第10号(通巻359号)・2021年9月号 P1012-1019



Key Words:口腔問題,摂食嚥下障害,低栄養,併存疾患,転帰




【アブストラクト】


Ⅰ.口腔問題と摂食嚥下障害の関係


Ⅱ.口腔問題と低栄養の関連


Ⅲ.口腔問題と併存疾患との関連


Ⅳ.口腔問題とリハビリテーションのアウトカム




【内容要約】


 本稿では高齢者における口腔問題や併存疾患と口腔機能障害、リハビリテーションの関連・予防について述べられている。加齢や脳血管障害、神経変性疾患、がんによる口腔機能障害が摂食嚥下障害を生じさせる。また口腔機能障害が咬合や咀嚼に起因し、低栄養状態へと移行することも少なくない。これによりADL低下、血管障害や糖尿病の発症を招く。これはORAL HEALTH ASSESSMENT TOOL(OHAT)を用いて、急性期病院に入院する高齢者を対象に、衛生状態の悪化が死亡率が高くなることが報告されている。


 加齢に伴い摂食嚥下機能低下を起こす要因は生理的変化や嚥下関連器官の器質的変化、唾液分泌低下、予備能低下がある。これらに併存疾患が加わる事で機能障害の悪化を強くする。また意識障害等により絶食や安静臥床が長期化することで口腔内衛生状態悪化により肺炎や摂食嚥下障害につながる。その他に歯数減少、口腔乾燥、唾液分泌減少は咬合力、咀嚼機能低下を引き起こし、咀嚼困難な食物が増え、経口摂取の選択肢を狭めてしまう。


 口腔機能低下でにより引き起こされるものに低栄養がある。これは絶飲食や食携帯の制限等から栄養摂取不足から起こる。これがサルコペニアというさななる負の連鎖を招く。低栄養を引き起こす要因はその他にもあり、歯の喪失もその一つである。義歯による補綴物がなく完全無歯顎では栄養不良となり、補綴物を有しても、適合していない場合には同じく栄養不良を招く。加齢により歯の喪失は関係するが、その他にも咬合力低下、舌圧低下が関連する。口腔機能評価により適切な食形態の提供は口腔内残留量の減少、食塊形成、咽頭部への送り込み等に深く関与し、誤嚥性肺炎肺炎の予防にもつながる。また姿勢調整、食事時の声掛け、ペーシング指導、食事環境調整も栄養状態改善に関わる。


 先ほども併存疾患についても述べているが、高齢者では歯周病も慢性炎症性疾患の一つとして深く関係する。炎症により毒性物質が歯肉血管内より全身に循環することや、炎症によりインスリンの働きが悪化し、糖尿病合併する。更には動脈硬化の関与から心筋梗塞、脳梗塞発症を引き起こす。周術期患者では術前よりオーラルマネージメントが重要となり、術後の気管切開術施行の予防にもつながる為、術前の口腔環境評価、嚥下間接訓練、咳嗽力強化の指導が必要である。またがん患者の化学療法、放射線治療に伴う粘膜炎、疼痛が摂食嚥下障害障害や声帯麻痺等の運動機能障害へつながる。口腔粘膜の症状として、接触痛、膨張、唾液減少により口腔内乾燥があり、咀嚼運動や、食塊形成に影響し、食事内容、食形態の工夫が必要である。


 リハビリテーション患者の約7割、急性期では約9割が口腔問題が関与しており、それによる低栄養は急性期から慢性期、在宅介護の幅広位場面で直面する課題である。早期より継続的な口腔環境の維持は覚醒レベル向上、肺炎予防、口腔機能低下予防、早期経口摂取開始に重要であり、他職種連携が不可欠である。


 専門職種による適切な評価を行い、口腔内環境を包括的かつ早期に把握することは肺炎予防のみならず、咀嚼機能等の口腔期障害や低栄養の予防につながり、その後の食事摂取状況、運動機能や認知機能、在院日数、自宅復帰等の患者の転帰に深く関与する。そのためリハビリテーションとしても最大限のアプローチを行い、知識や技術の共有が必要である。




【拝読させて頂き感じる点】


 入院時から退院まで口腔ケアは看護師に依頼されたことはないでしょうか。私も口腔ケアの動作評価を行い、アプローチを行い在宅に向けて支援をさせて頂いています。口腔問題は専門性が問われ、詳細な評価を取るために苦労されている療法士の先生方は少なく無いと思います。本項を拝読させて頂き、高齢者と口腔問題については密接な関係にあり、入院から退院、在宅でリハビリテーション介入の必要性があり、他職種での多角的な評価を必要とするを再認識しました。また予防医学の面からも、この先研究や議論が広がる分野では無いでしょうか。対象者の口腔機能向上からQOLの向上もアプローチできるのではないでしょうか。




【最後に一言】


 高齢者と口腔機能は深く密接し、これを読んでいる先生方の中にも臨床で口腔機能低下により起因する身体・認知機能低下を有する対象者のアプローチに熟考されてたことはないでしょうか。本稿にはORAL HEALTH ASSESSMENT TOOL(OHAT)、Revised Oral Assessment Guide(ROAG)の評価シートが記載されており、今後の評価の一つして考えてみてはいかがでしょうか。リハビリテーションによる障害予防が益々発展していくことを願い、終わりの言葉にさせて頂きます。




記事:本多竜也




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