リーダーシップ理論と研究
羽田明浩
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION
第31巻・第14号(通巻377号)・2022年12月号 P1366-1372
Key Words:トランザクション・リーダーシップ、トランスフォーメーション・リーダーシップ、サーバント・リーダーシップ、シェアード・リーダーシップ
Ⅰ.リーダーシップとは
企業に限らず、軍隊、学校、スポーツチーム、ボランティア団体、医療機関等、あらゆる種類の集団や組織において、目標達成感に向けて方向づけ統率する働きと捉えられる。
しかしリーダーシップについて様々な定義が提示されてきたが、リーダーシップの定義はいまだ完全に定まってはいない。これには時代と共にリーダーシップに求められるものが変化していることも背景として考えられる。
Ⅱ.リーダーシップ研究の変遷
本格的なリーダーシップ研究は、1930年代から始まり、1930〜1940年代には優れたリーダーがもつべき特性を求めるリーダーシップの個性の理論が展開されている。
1950〜1960年代はリーダーの行動を分析しリーダーシップのあり方を発見するリーダーシップ行動論に移っている。1970〜1980年代では、有効なリーダーシップ行動は状況に依存し直面する状況とフォロワーの状況によって効果的なリーダーシップは異なるというコンティンジェンシー理論へと移っている。
そして1990年代では、リーダーとメンバーの関係性に注目するリーダー・メンバー・エクスチェンジ理論と、部下に対して「アメとムチ」を使いこなす管理型の側面をもったトランザクション・リーダーシップ理論、明確にビジョンを掲げて部下の学習や成長を重視するトランスフォーメーション・リーダーシップ理論が登場している。
さらに2000年代に入ると、フォロワー中心、利他主義等の特徴がありフォロワーに奉仕するサーバントリーダーシップ理論が注目されている。
そしてリーダーとフォロワーの垂直関係ではなく、各々のメンバーがリーダーのように振る舞い、他のメンバーに影響を与え合う水平関係のリーダーシップであるシェアード・リーダーシップ理論も登場している。
Ⅲ.リーダーシップ理論の研究アプローチ
医療提供体制の変容期において、医療機関のリーダーが発揮すべきリーダーシップは、トランスフォーメーション・リーダーシップにおけるカリスマ型リーダーである。この理論が述べる組織のビジョン・ミッションを明確に掲げ、医療スタッフであるメンバーに働く意義やプライドを持ってもらうことを強く認識させることが肝心である。
その上で、リハビリテーションスタッフを含めたチーム医療を積極的に行うべく、医療スタッフがお互いに影響を与え合うシェアード・リーダーシップを、医療機関のメンバー全員が意識するような医療提供体制作りが必要である。
リーダーシップ理論は時代とともにさまざまな理論が唱えられるが、どの理論にも共通して大切なことは、各々の状況に応じた最もふさわしいリーダーシップ理論を用いて、直面するリハビリテーション医療を充実させることにあると考える。
【勉強となった点】
リーダーシップと一言で述べてもその時代ごとで細かなニュアンスは違っており、今なお変化していることがわかった。
従来としてのメンバーを統率するリーダーシップ像を思い浮かべているが、メンバー全員が各々に相互的な作用をもたらし、全員でリーダーシップを発揮するような形も現代では増えている。
リーダーシップ理論ではなく、目標とメンバーへの注目を忘れずにチームを作り上げていくことが重要ではないでしょうか。
【最後に一言】
本稿を読んでいる時期はワールドカップが行われ、我が国も参加し国民の多くはその勇姿に勇気や感動を与えてもらったのではないでしょうか。少なからず私自身はその一人である。
試合後のキャプテンのコメントから若手選手の実力をいかに引き出すことができるか、そのための環境づくりを行いながらチームを牽引していたように私は感じました。
これを読んでいる読者の皆さんにおかれましてさまざまな環境で働き、大小様々のチームの一員ではないでしょうか。それぞれのチームの特徴に合わせて自信ができることから考えることから始めてみませんか。ぜひリーダーシップとは何かを考えるきっかけとなればと思います。
執筆:本多竜也