回復期における栄養と理学療法

(231222配信)

回復期における栄養と理学療法

木村鷹介

理学療法学 第50巻第5号 217-222頁(2023年)



 栄養と理学療法のポイントを考えるというシリーズの連載であり、この度のキーワードは回復期と栄養である。



 回復期病棟において患者さんが回復していく経過には、栄養の観点が重要であるということは、全てのセラピストが予想できる部分だと思う。


本文献の面白さは、そこから1段階も2段階も上で、栄養素が足りないと、どのような経過を辿るのか。また、低栄養の原因、必要なエネルギー量を具体的に提示している文献は多くないので、一読をお勧めしたい。



低栄養の1つの指標である、下腿周径による低栄養・サルコペニアの推定から紹介する。

低栄養やサルコペニアを有する方の急性期入院高齢者のカットオフ値も参考数値として載っているが、測定肢位が書かれていないため、各施設での測定によるデータ収集が求められる。


対象:低栄養 回復期脳卒中患者

姿勢:背臥位、座位

測定部位:非麻痺側

カットオフ値:男性31cm以下、女性30cm以下


対象:サルコペニア 地域在住の中年・高齢者

姿勢:立位

カットオフ値:男性34cm未満、女性33cm未満



そもそも低栄養の原因として


・侵襲や感染症による急性炎症

・提供する食事量の不足

・糖尿病、慢性心不全による慢性炎症

・食事摂取量の低下


があり、認知機能や高次脳機能障害だけでなく、座位耐久性、摂食・嚥下機能の低下、腸管運動の低下等の要因が関与する。



エネルギー必要量に関しては、本文にも理学療法の内容に加え、日中の身体活動量も評価し、管理栄養士やその他職種との情報共有の重要性が述べられている。




腑に落ちたポイント!


低栄養リスクを認めた脳卒中患者では、低栄養のみられない方に比べ、退院時のFIMが低く、自宅退院率も低下する。

→回復期の低栄養に加え、サルコペニアでは退院時のADLの回復具合、自宅退院率の負の関連だけでなく、医療費の増加も論じられている。エネルギー摂取量と身体活動量、骨格筋量も関連するため、まさに他職種で評価し、情報を共有する必要性が高い



回復期病棟の入院患者(640名弱を対象)の低栄養の割合

全体:約41%

脳梗塞:約55%

脳出血:約42%

大腿骨近位部骨折:37%

脊椎圧迫骨折:約37%

肺炎後廃用症候群:約93%

→全体数を理解するだけでなく、上記の割合の患者さん、利用者さんはが運動負荷を単純に考えるのではなく、栄養面や食事量を考えて運動負荷を設定していく必要がある。



「はじめに」で述べられているが、リハビリに従事するスタッフが栄養状態を配慮せずに、運動療法を介入することで、十分な効果が期待できないだけでなく、かえって悪化するケースも考慮しなければならない。


栄養管理と理学療法が両輪で協働させるには、理学療法士だから運動だけ、という区分けでなく、知識を有することと他職種で連携することの重要性を改めて感じる。



急性期及び回復期病棟で勤務している方は是非、本文献の一読をお勧めしたい内容である。



記事:ひわ



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