慢性疼痛の脳科学的理解のポイント

(20200905配信)

慢性疼痛の脳科学的理解のポイント

大住倫弘,森岡周

理学療法37巻5号2020年5月 P404-411


 慢性疼痛の脳のメカニズムに関して,最近の知見を含めて説明している内容である.

要旨がシンプルにまとめられている為,要旨を読んで興味があれば一読をオススメしたい.


「はじめに」にて近年の考え方が紹介されている.

・慢性疼痛者→脳内へ機能的・構造的異常が存在する.

・侵害刺激や末梢器官の炎症による疼痛時と炎症が治まってからの疼痛の慢性化した時の脳のメカニズムは違うと報告されている.


 下行性疼痛抑制系は有酸素運動のような単純な運動でも作動する.中脳中心灰白質は前頭前野からの入力を受け,認知プロセスにより疼痛を抑制できる.


慢性疼痛の機能異常→前頭前野の機能不全

前頭前野の下行性疼痛抑制系と認知的な疼痛制御する機能の破綻(下記に簡略説明)があり,疼痛の誤った認知を適正化する教育的な関わりを運動療法とともに併用する必要がある.


慢性疼痛者の患側を安静を望む理由を脳の機能で説明している.これは臨床上見られる部分であり,側坐核の疼痛緩和を予測する機能が活性化しないと考えられている.痛みの緩和が報酬と思えない為,患肢を安静につながっているものと理解した.


腑に落ちたポイント!

・痛みのボトムアッププロセスとトップダウンプロセスは図でも紹介されており,まさに疼痛のメカニズムを考える上で基本になる考えの為,是非理解して欲しい内容である.


ボトムアッププロセスの主たる疼痛の脳領域

視床→一次体性感覚野・一次運動野⇄二次体性感覚野:(疼痛の場所・時間・強さ)

→前部帯状皮質⇄(前頭前野:疼痛の知覚の意味づけ)

→島皮質→前部帯状皮質:(疼痛の不快・嫌悪)

それぞれ視床から脳活動が伝わる事で,感覚的側面,認知的側面,情動的側面に分かれている.


疼痛のトップダウンプロセス

下行性疼痛抑制系

:中脳中心灰白質から吻側延髄腹内側部を経由し脊髄後角に伸びる


 目に見えない分野だからこそ研究から臨床への橋渡しの部分が「脳」の分野の不十分な部分だと思う.今後の課題として大住氏も言われているが,ICTの発達により,脳機能のイメージング研究デバイスがタブレット端末でも安価で使用できるようになってきており,ICT技術の活用が研究と臨床の関節部になると感じる.

記事:ひわ


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