慢性疼痛の病態生理学的理解のポイント

(20200812配信)

慢性疼痛の病態生理学的理解のポイント

坂本淳哉,沖田実

理学療法37巻5号 2020年5月P396-403


 慢性疼痛に対して病態生理学の観点から,基本的な知識理解をキーワードに展開されている内容である.


 序盤より侵害受容性疼痛や神経系の感作,可塑性変化等,神経系の学習が苦手な方はすぐに本を閉じたくなるような単語が続くが,一つ一つ丁寧にメカニズムを図を交えて説明流れで書かれているので,慢性疼痛に関する知識入門にもオススメしたい.


痛みの感作

:正常な入力に対する侵害受容ニューロンが亢進した反応性

つまり,普通は反応しない侵害刺激で侵害受容ニューロンが反応してしまう状態を指す.

単語ごとの解説がされているのもこのジャーナルのわかりやすいポイントである.


 慢性疼痛を理解した上で,慢性疼痛の発生リスクを抑え,身体活動量を維持向上する理学療法戦略の重要性を「おわりに」で述べられている.まずは生理学的病態理解の重要性を改めて感じて欲しい.


腑に落ちたポイント

・損傷組織に集まったマクロファージや好中球,脂肪細胞が炎症エディエーターを産生

→それらが炎症細胞に作用して活性化し,炎症反応が持続すると慢性疼痛に繋がる

:炎症に伴う疼痛の原理が図を用いてここまで簡略化してある.(図1は非常にオススメ)

 マクロファージと肥満細胞→神経成長因子に相互作用

 ブラジキニン→肥満細胞に作用,マクロファージと相互作用


・不活動が慢性疼痛に及ぼす影響

足部周囲の骨折(免荷+スプリント固定)の約57%に機会的アロディニアが認められる.

腰痛発症から4日以上安静をとった患者群で1年以上疼痛残存した.

:未だ研究中の内容ながら著者の現在の研究成果と見解が書かれている.

 炎症が生じた末梢組織を過度に不活動にする

 →脊髄レベルで中枢感作が発生

 →慢性疼痛に発展する可能性


 不活度が神経系の感作や可塑的変化を引き起こしてしまうのではないかという事は,先行研究でなされている.侵害受容性の疼痛患者に対して根拠のない安静を促す事は慢性疼痛を医療者で作ってしまう可能性もある事がわかる.

だからこそ病態生理学から復習する事が重要で,寒冷療法を用いて早期より炎症に対する対応も急性疼痛から慢性疼痛への予防に繋がる.

記事:ひわ


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