整形外科疾患の回復期リハビリテーション

(230811配信)

整形外科疾患の回復期リハビリテーション 現状と課題

高橋剛治

総合リハビリテーション

第51巻・第5号・2023年5月号 P495-503

Key  Words:整形外科疾患,、回復期リハビリテーション、大腿骨近位部骨折、FIM、実績指数


【アブストラクト】


 回復期リハビリテーション病棟について、脳血管疾患が中心になることが多いですが、回復期リハビリテーション病棟協会の報告によると脳血管疾患と整形外科疾患の患者割合はどちらも40%強を占めており、ADL利得も同等の結果となっています。しかし、実績指数の中央値はやや低く、整形外科疾患は入院期間が短く、実績指数が低くなりやすいことが課題である。


 

【内容のポイント】


Ⅰ.はじめに

 本稿では、回復期リハビリテーション病棟協会が集計する回復期リハビリテーション病棟、1530病院、2009病棟、90946床(2021年6月1日時点)のうち、有効回答である889病院と 1225病棟と 56,007床から得られたデータと、2020年・2022年度に回復リハビリテーション病棟入院料(施設基準)に関する重要な改定(①②)についての課題を述べる。

①2020年度の回復期リハビリテーション病棟入院料の1の施設基準における実績指数の40 

②2022年度の回復期リハビリテーション病棟入院料の1と2の施設基準における重症者「4割以上」



Ⅱ.現状


1.患者属性


①原因疾患

 疾患別では脳血管系疾患が44.7%、整形外科系疾患45.4%、廃用症候群8.0%、その他1.9%であり、脳血管系疾患と整形外科系疾患は同等の割合となっている。

 整形外科系疾患の中で骨折系疾患は39.7%、人工関節系疾患が5.7%となる。


②入院日数の分布

 入院日数分布について、残存患者割合は90日では約20%、150日で約5%であり、原因疾患別では、「脳血管系疾患1」より「脳血管系疾患3」、「人工関節系疾患」よりも「骨折系疾患」が入院期間が長いことが示されている。特に「人工関節系疾患」「骨折系疾患」ともに算定日数90日であるが、「骨折系疾患」が入院期間が長いという結果となっている。


③原因疾患別の入棟前の居場所・退棟経路

 入棟経路を原因疾患別にみると、 脳血管系疾患、廃用症候群は他院が最も多く、 整形外科系疾患では院内他病棟と他院が各約4割である。一方、退棟経路はすべての原因疾患で自宅が最も多い。


④入棟中の転倒・転落

 入院中に転倒・転落の経験が「1−2回」が16.6%であり、転倒・転落の経験を疾患別にすると、脳血管系疾患が21.8%、整形外科系疾患12.2%である。


2.ADL利得

 原因疾忠別にみたADL利得(FIM)をみると、FIM利得は脳血管系疾患は入棟時59.5点→退棟時83.9点で FIM利得24.4点である。 一方、整形外科疾患は入棟時71.4点→退棟時96.7点でFIM利得25.3点との結果であり、 FIM利得にはあまり差はないが、入院日数を考慮すると整形外科疾忠のほうが高い水準である。



Ⅲ.課題


 ①2020年度の診療報酬改定により回復期リハビリテーション入院料1の施設基準である実績指数が37→40に引き上げられた。


 実績指数が求められることにより算定上限日数から整形外科系疾患よりも脳血管系疾患の入棟率を上げるが考えられる。


 また、整形外科疾患の入院患者の平均年齢は高く、認知症の合併リスクが高く、入院期間が長くなることでFIM利得を阻害する要因となるため、骨折系疾患より人工関節系疾患を多く入棟させることが実績指数を上げる可能性が考えられる。


②2022年度の診療報酬改定では、第三者評価、回復期リハビリテーション病棟入院料の1と2では重症者「4割以上」と明記された。(FIM運動項目55点以下や日常生活 10点以上)


 整形外科系疾患の入棟時FIMは71.4点であり、上記の重症者と定義される患者は少ないことがわかる。



Ⅳ.終わりに


 前項で述べたように、脳血管疾患を入棟を増やすことで実績指数を上げることができる。そのため整形外科系疾患は脳血管系疾患に比べ、各病院での工夫が重要である。また脳血管系疾患と整形外科系疾患を合算した実績指数計算の受当性について検証が必要ではないだろうか。


 また、骨折系疾患は平均年齢の高さ原因で、ADLが向上せず入院期間が長期化している可能性があり、骨折系、(特に大腿骨近位部骨折)の入院期間の減少についての取り組みが必要である。


 人工関節系疾患の実績指数向上には効率よく在院日数の短縮を図り、合併症リスクの高い認知症患者へのアプローチへの知識が重要である。


 これらより急性期病棟を併設している病院では、整形外科系疾患患者を早期から回復期リハビリテーション病棟に転棟させるケースや他院の集中治療室から整形科系疾患の転院を受け入れるケースが考えられる。



【勉強となった点】


 算定上限からみると、脳血管系疾患よりも整形外科系疾患が短く、早期からADL向上し、早期退院する印象であった。しかし、診療報酬改定より回復期リハビリテーション病棟には実績指数が求められるようになり、短い在院日数で効果的なリハビリテーション介入によるADL向上が数値が結果となっていることがわかる。


 各病院ごとで疾患別の患者推移にばらつきがあり、それぞれの地域特性に応じた実績指数に対する対策を講じなければならない。



【最後に一言】


 制度の特性は日頃、リハビリテーション介入を主としている職員にとっては、知らないことも多い分野ではないでしょうか。私自身もその1人です。


診療報酬改定は国がこれから医療機関に求める方向指針であり、近い将来自身が所属する医療院、上司から求められる介入効果を示しており、我々も知らなければならないものであり、本稿を通して回復期リハビリテーション病棟に求められるアウトカムについて学び、考える機会として頂きたい。



記事:本多竜也



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