尿失禁の治療 ③その他の治療と補助器具

(221204配信)

尿失禁の治療 ③その他の治療と補助器具

室岡陽子

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION

第31巻・第9号(通巻372号)・2022年8月号

P856-861


Key Words:自己導尿、生活環境、衛生材料、スキンケア



【アブストラクト】


Ⅰ.生活面での工夫


(1)衣類の工夫


 排尿障害の要因には機能障害から認知機能障害など様々あるがここでは巧緻性低下に焦点を当てる。尿意がありトイレまで移動するが衣服や下着が下ろせない、または下ろす際に時間を要する等の理由で失禁してしまう。


これに対してファスナーのつまみに輪っかをつけたり、マジックテープに変更するなどの工夫がある。



(2)食事の工夫


 飲食は排尿に深く関係し、水の飲みすぎが夜間頻尿を招くことを心配する高齢者も少なくない。1日の水分摂取量は1500mlを基準としているが、季節や活動量により変動もあるため原則「体重(Kg)×20〜25(ml)」を基準に摂取する。


これには塩分過剰摂取も水分過多を招くため減塩にも配慮が必要である。



(3)生活環境の工夫


 排泄動作自立のためには周囲の環境、トイレ内環境が必要である。これは介助者の負担軽減の面でも同様である。福祉用具の給付・貸与や住宅改修等の社会資源制度も有効に活用してほしい。サービスの多様性に悩んだ際には市町村窓口や介護支援相談員に相談することも大切である。



Ⅱ.自己導尿の工夫


(1)間欠導尿の実際


 さまざまな障害による身体活動低下した場合、自己導尿時の体位や使用物品の配置等に工夫が必要である。


重力を利用するためには座位が有効でいきみやすさが膀胱内の残尿を少なくする。座位保持困難であればベッドのヘッドアップ機能を利用するのも効果的である。


女性の場合は尿道を確認しずらいため鏡等を利用し、尿器を含めた環境設定が排尿の自立には重要である。



(2)自己導尿時に使用するカテーテル


 一般的に間欠導尿用のセルフカテーテルを使用し、多くはシリコンゴム性でケースに収納する安価な製品である。直接便座やベッド上から離れた尿器に排尿する場合には延長チューブが接続できるセルフカテーテルもある。


また外出先や洗浄・消毒が困難な場合には使い捨てカテーテルも存在する。最近では親水性コーティングがされ、潤滑剤不要で取り出しやすくなったものも出来ている。


 長時間導尿の実施が困難な状況では間欠式バルーンカテーテルが選択されることもあり、日中はレッグバッグを装着し移動中でも排尿が可能となる。夜間はナイトバルーンを用いる。



Ⅳ.スキンケアー注意すべき皮膚トラブル


(1)ドライスキン


 表皮角質層に水分が失われることで、本来皮膚に備わったバリア機能が低下し、ドライスキンとなり、掻痒感を伴う。その為清潔を保ち、乾燥を防ぎ、皮膚洗浄時は弱酸性の泡状洗剤で愛護的に洗浄することが角質層のケアには重要である。



(2)浸軟


 角質層に過剰な水分浸潤による膨潤した状態を浸軟という。この状態では些細なずれや摩擦が容易に皮膚損傷を招く為、洗浄・保湿に加え、撥水クリーム等を用いて水分や排泄物の付着を防ぐことが重要である。



(3)皮膚真菌感染症


 おむつ内に失禁した状態では、皮膚が尿により浸軟しおむつと密着することで適度な温度と多湿の環境が生まれる。これでは細菌や真菌にとって好環境となり、皮膚感染を招く。


皮膚の清潔を保ち、皮膚状態の観察が必要であり、発赤・発疹の早期発見が診察による薬物治療の開始につながる。また介助者の手指衛生も感染拡大させないために重要である。



【勉強となった点】


 間欠的自己導尿の手技確立には身体・認知機能の評価とそれを行う環境評価が重要であることがわかった。


残存機能や実施環境に合わせて選定が必要であり、医療従事者の適切な評価・選定のためには、使用する道具の種類を知っていなければ助言に難渋する。



【最後に一言】


 排尿障害による排泄介助は本人や介助者を含め、自宅退院を阻害する要因の一つである。尿道留置カテーテルも問題解決に有効な選択である。


しかしQOL低下、合併症の予防の観点を踏まえた際に清潔間欠導尿は問題解決に大きく貢献できる手段の一つではないでしょうか。


 しかし在宅で清潔間欠導尿の施行に至る例はまだ少なく、介助者の認識も低いことが今後の課題ではないでしょうか。そのためには我々セラピストの理解も深めていく必要があり、本稿を拝読し参考にして頂きたい。




執筆:本多竜也



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