下肢関節の機能解剖学的特性からみた理学療法実践の考え方と進め方
対馬栄輝
理学療法37巻3号 2020年3月P196−208
下肢関節(股関節−膝関節−足関節)の基本的な各関節の構造の説明から,評価,理学療法実践の流れで書かれている.
ジャーナルのターゲット
運動連鎖や機能解剖学のジャンルの初級者
臨床5年以上経過し基礎の重要性を感じた方
機能解剖学からのアプローチでの注意点
・関節の構造は一律
・個人の体型・姿勢・動作習慣・生活環境にて変化する
ジャーナルの構成
股関節・膝関節・足関節の構造及び形態的な特徴
解剖学的特性を考慮した評価
理学療法実践の考え方と進め方
図や表による補足が多く可視化されているので,すんなりと理解できる内容にまとめられている.
その中でも「表 下肢体幹の運動連鎖の例」は一覧となっているので,関節運動の連なりが難しいという方
特に靭帯に苦手と感じる方やknee-in toe-out等の表現が難しい方は必見である.
・靭帯の強靭化
:腸骨大腿靭帯と恥骨大腿靭帯・坐骨大腿靭帯の強靭化の考察
4足歩行から2足歩行移動方法を人間は変化し,股関節屈曲位での安定から伸展位となった.股関節前方の不安定性の補強として,3靭帯が強靭化し股関節伸展位で強く緊張する構造となると考察されている.
靭帯の強靭化の推論は,かなりの確率で読み飛ばしてしまう教科書の概要に書かれている内容かもしれないが、この機能解剖学の理解において,なぜ?に対する考察が書かれている事は非常に勉強になる.
・股関節伸展の基本
:仕事量では股関節伸展,内転の順で大きく,内旋が最も小さい
股関節伸展の伸長性低下や伸展筋力の低下は,骨盤前傾の原因となり,元々の股関節の筋力特性の不均衡から不良姿勢・非効率な運動に繋がる.
・評価の概念
:ある姿勢・動作アライメントの観察だけでは問題点抽出は困難
例)立位での両側部回内・骨盤前傾が強い→股関節内旋や大きい前捻角の可能性
というような推論から,スクワット動作で膝関節の動きを確認し,そこから足部の背屈が問題なのか脛骨外捻なのかというアプローチの為の臨床推論を立てていく(あくまで一例)
機能解剖学が絶対である!というものではなく,本文中にも対馬氏も述べているが,評価の幅を拡げるという考え方は非常に重要だと思う.1つの症状に対してどの関節での問題と捉えるのか?答えは患者さんの動作だが,その途中式の捉え方を判断する1つの手段が機能解剖学的な捉え方だと思う.
記事:ひわ