回復期リハビリテーションと栄養管理

(220304配信)

回復期リハビリテーションと栄養管理

吉村芳弘

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION

第31巻・第1号(通巻364号)・2022年1月号 P28-37

Key Words:低栄養、GLIM基準、たんぱく質、口腔管理、嚥下障害



【アブストラクト】


Ⅰ.リハビリテーション診療と栄養管理の必要性


 日本における人口の高齢化と疾病の変化に伴い、リハビリテーション医療においても同様に高齢化しており、低栄養や低栄養リスクは高くなっている。低栄養により免疫力低下、褥瘡リスク、歩行の不安定性、認知機能の低下、意欲減退、入院の長期化等の臨床的合併症が起こりうることが想定されるため、栄養がんりが重要である。



Ⅱ.リハビリテーション診療と低栄養の疫学


 リハビリテーション高齢患者の低栄養(49ー67%)とサルコペニア(40ー46%)の合併率は高く、その中でもリハビリテーション病院・施設では50.5%と低栄養の割合が高くあった。



Ⅲ.低栄養とリハビリテーションの不良のアウトカム


 リハビリテーションを行う脳卒中の低栄養患者はADLが低く、死亡率や入院費が高く、長期入院となることが示されており、回復期リハビリテーション病棟では栄養状態不良で高齢であるほどADLの改善度が低くなることが脳卒中患者で示されている。



Ⅳ.ICFと低栄養


 ICFの項目には摂食機能や消化機能等、栄養状態が含まれており、低栄養も機能障害の一つとされその他の機能障害と同様に低栄養を評価する必要がある。



Ⅴ. 低栄養の診断基準


 Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)が低栄養の国際基準とされており、低栄養スクリーニング、現症と病因のアセスメントによる栄養診断、重症度判定、病因分類で構成されている。

 現症のアセスメントには体重減少、筋肉量の減少(DXA法やBIA法)があり、病因のアセスメントには栄養摂取量と疾患の種類がある。それぞれ1つ以上の項目があれば低栄養と診断される。重症度については体重減少、低BMI、筋肉量減少の程度で判定される。



Ⅵ. 回復期リハビリテーション病棟いおける多職種での栄養管理


 令和2年の回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準等の改正で、入院料1では「常勤の専任管理栄養士の配置を要件」とされており、回復期リハビリテーション病棟で管理栄養士が栄養管理に関わることが、患者の栄養状態改善につながり、その先のADLや自宅退院復帰率の改善にもつながることが報告される。



Ⅶ.取り組み事例


①熊リハパワーライス®︎

 たんぱく質と中鎖脂肪のパウダーとソースを軟飯に混ぜたもので経口摂取量減少した患者の栄養強化を行う。

 

②分岐鎖アミノ酸(BCAA)やロイシン

 サルコペニア患者のリハビリテーションにおいて高たんぱく質は骨格筋合成材料であり、骨格筋量増大とADL改善が期待される。


③集団起立訓練

 筋力強化やバランス強化、全身耐久性、ADL向上を目的としている。午前11時半、午後3時半の2回(各約20分)を病棟のタイムスケジュールに取り込まれている。


【勉強となった点】


 栄養療法の阻害要因として摂食嚥下障害が深く関わり、回復期リハビリテーションの脳卒中患者においては神経障害による摂食嚥下障害だけではなく、高齢患者のリスクとして老嚥やサルコペニア、低栄養による摂食嚥下障害を常に念頭においておき、通常の摂食嚥下訓練に合わせて積極的な全身運動療法や栄養療法が必要である。



【最後に一言】


 本稿には筆者の回復期リハビリテーション病院で実際に取り組まれている栄養強化、運動療法による筋肉増強訓練が詳細に述べられており、多岐にわたる疾患で回復期リハビリテーション病棟患者のADL向上の役立てになるのではないでしょうか。このように多職種連携による介入が、超高齢化社会へと移行してきているわが国で必要となっており、回復期だけではなく、急性期、生活期でも十分に生かすことができるのではないでしょうか。ぜひ一度本稿に目を通して頂きたい。



執筆:本多竜也


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