多様なニーズに対応できる療法士の育成を目指した新人教育とレジデント制度の実践

(20211022配信)

多様なニーズに対応できる療法士の育成を目指した新人教育とレジデント制度の実践

平田 和彦

総合リハビリテーション Vol.49 No.6 pp563-568



こんな方にオススメ!


 ・これから就活をする


 ・現在進行形で教育に携わっている


 ・将来教育に携わろうとしている


Key word:職場内教育(OJT)、屋根瓦方式、レジデント制度



今回は広島大学病院で行われているレジデント制度に関する記事を紹介します。



早速ですが、これから就職先を考えようとしている方はどのような不安を持っているでしょうか?一方で、既に理学療法士として働かれている方は新人の際にどのような不安があったでしょうか?



この記事では基本的な臨床技術や思考過程を習得し、且つ継続して自己研鑽できる人材育成を目指した教育制度について述べられています。



そのような目標を掲げるレジデント制度という新人教育制度がどのように取り組まれているのか、注目しながら読み進めていきましょう。



【レジデント制度とは】


現在、療法士には医師や看護師のようなOn-the-job-trainingでの研修がなく技術面での教育も体系化されていません。


また、リハビリテーションの現場では、急性期・回復期・生活期と分かれているのに加え、疾患別でも分かれているため知識が断片的となり全体像の把握が難しいことはしばしば経験することかと思います。


そのため、昨今よく耳にする「地域包括ケア」には幅広い視野でリハビリテーション全体を把握し、医療-介護の専門職をつなぐことのできるスタッフの育成が求められています。


レジデント制度は、高度急性期から一般の急性期病院において求められる臨床技術・思考過程の習得と自己研鑽が積める人材の育成を目指し、2年間の研修の間に様々な疾患や多職種との連携を学ぶ教育制度です。


加えてこの制度は、全国のどの急性期病院でも実施できる標準的な卒後教育システムの構築も目指すものでもあります。



【レジデント制度の内容】


レジデント制度は屋根瓦方式(各々が役割を持ち、臨床能力に応じた責任を負いつつ診療・教育をチームで行う方法)による指導体制をコンセプトとしており、指導者のもとで資質・技能を備えた優れた療法士になるための基礎的な能力を身に付けることを目標としています。


そのために行われている特徴的なことを幾つか挙げてみましょう。



 ・研修目標が明確化されている。


 ・指導者と2人一組で診療する時間がある(毎日1時間程度)。


 ・指導者と診療することで、診療技術や臨床推論をリアルタイムな指導を受けられる。


 ・最終的に多種多様な疾患・重複障害などすべての疾患の単独診療を経験する。


 ・研修医セミナーへ参加することで幅広い医学知識を得ることができる。


 ・院内の他職種の見学や他院への研修を行うことができる。


 など



列挙するだけでも様々な経験が得られることが分かりますし、とりわけ指導者との診療時間が設けられていることがこの教育制度のポイントであると捉えられます。


その他、臨床前後のチームでの打ち合わせや振り返りがあり、それが新人にとってその日を省みる時間となっています。



【将来の展望】


新人やレジデントの成長には自然と臨床に対して情熱を持ち、積極的に学習に取り組めるような教育環境を構築することが理想であるとしています。そのためには、技術・知識のほかに先輩療法士が臨床の面白さを伝えていくのも大事であると考えられています。


日本においては広島大学病院のレジデント制度のように、卒後の研修制度を有している施設はありますがそれぞれが独自のものでとどまっているのが現状です。今後は卒後教育の標準化のために各施設の教育体制の把握・効果の可視化が課題とされています。



【Impressions】


将来的にPT・OT・STのおかれる環境は大きく変化されることが予想され、現在でも疾患の多様性が増えつつあり、在宅診療への移行も進みつつあります。そんな時代に対応するためにも、新人のうちから優れた理学療法士を目指すための研修は必要不可欠であるのは明らかであると思います。



レジデント制度は私も経験・修了しており、様々な経験を積むことができたと感じています。次は我々の世代が新人たちに知識・技術・臨床の楽しさを伝え、優れた療法士の育成に心がけたいと強く感じました。




明日からできること


・自身が臨床に情熱を持っている姿を新人に見せる!

・打ち合わせを行ったうえで新人と診療に臨み、振り返る!




記事:てつ@永遠の若手理学療法士


セラレビ無料メルマガに登録いただければ

・先輩のまとめたジャーナルレビューをメールでお届けします
・週1〜2回(毎週日曜日、金曜日にお届けします)

是非、無料で勉強できる環境を整えてください

メルマガの詳細