難治性疼痛に対するリハビリテーション 

(221009配信)

難治性疼痛に対するリハビリテーション

齋藤洋一

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第30巻・第12号(通巻361号)・2021年11月号 P1214-1220



Key Words:脳卒中後疼痛、引き抜き損傷、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群、脊髄損傷



【アブストラクト】


Ⅰ.難治性疼痛のメカニズムと臨床的特徴


Ⅱ.難治性疼痛のリハビリテーションエビデンス


Ⅲ.難治性疼痛のリハビリテーション実践


Ⅳ.難治性疼痛のリハビリテーショントピック




【内容要約】


 本稿では難治性疼痛として中枢性脳卒中後疼痛、引き抜き損傷、幻肢痛、脊髄損傷後疼痛(神経障害性疼痛)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)について各項目で述べられている。


 はじめに中枢性脳卒中後疼痛の代表的な疼痛として視床病変があり、病変と対側の手部の疼痛があり、被殻、脳幹病変では対側の痺れる様の下肢痛がある。


それに加え運動障害による痙縮、拘縮痛、肩関節の亜脱臼等の疼痛も見られ、中枢性脳卒中後疼痛は睡眠により疼痛を感じなくなる。


これらの疼痛によりリハビリテーション介入が円滑に行えない場合がある。一般的な運動療法では疼痛増強するため、プレガバリン等の神経障害性疼痛治療薬を用いたり、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)、脊髄刺激(SCS)などが併用されることもある。


 次に引き抜き損傷後疼痛はジンジンとする持続痛、電撃痛が混在し、電撃痛は脊髄後根進入帯破壊術で著明に減退することで、瘢痕組織が原因と考えられ、持続痛は幻肢痛と共通する疼痛認識機構の障害と考えられ、ニューロフィードバック治療が期待される。


手術にて腕神経叢の再建が可能であれば神経移行術が行われ、完全引き抜きで再建困難であれば肋間神経や副神経移行術が行われる。


リハビリテーションにより疼痛自体の改善は困難であるが、術後リハビリテーションでは3−5ヶ月で神経が進展するため、その間に筋萎縮させないことが重要である。


しかし適切なリハビリテーションでも疼痛が誘発されることがあり、一般的にはSCSでは無効である。


 幻肢痛については四肢切断後80%の患者に失った四肢が存在する錯覚や切断部に温冷覚や痺れ感等を近くする、これらを総じて幻肢という。


これらに合併する疼痛を幻肢痛といい、発症頻度は四肢切断患者の50-80%とされ、半数は数年単位で幻肢痛が継続する。


また幻肢痛に一次運動野刺激が著効する報告もあり、脳内疼痛認知障害と考えられる。切断前には外科医、義肢装具士、理学療法士による目標設定を行い、術前評価を含めてリハビリテーション介入を行い、全体調整訓練、ストレッチ、筋力強化、持久力強化等を行う。


義手や適応デバイス、口や足等の他部位でのADL動作練習も行う。その過程で幻肢痛が生じる場合には鏡療法、バーチャルリアリティ、rTMSによる一次運動野刺激等が行われる。


また断端部痛にはマッサージによる疼痛緩和が有効な場合がある。そのほかには感染症や皮膚損傷が原因である場合があるため医師の診察が必要である。


 脊髄損傷後疼痛(神経障害性疼痛)では損傷高位の疼痛“at level pain”は片側または両側性で、損傷脊髄のデルマトームから3髄節程度尾側までの範囲に生じるが、それより尾側に広がらないものとされ、脊髄および神経根そのものの障害に由来する。


脊髄損傷のリハビリテーションは残存機能を強化することが主であり、発症直後より家庭・職場復帰に至るまで、四肢麻痺に多面的アプローチによるADL向上を図り、社会復帰訓練も行う。


これらを神経障害性疼痛が阻害している場合には、NSAIDs、ステロイド、神経障害性疼痛治療薬、鎮痛補助薬、オピオイド、麻酔薬を病態により併用し、不十分な場合に、不全麻痺例では脊髄刺激療法やrTMSが有効な報告もある。


また認知行動療法も有効であり、疼痛の程度は変わらないが、疼痛由来の不自由さ、不安、うつ、不眠等の改善が期待できる。


 最後に複合性局所疼痛症候群とは身体損傷治癒後に疼痛が残存してる状態であり、明らかな損傷がなく、検査でも異常がないこともある。


脳卒中後では肩手症候群(SHS)があり、頚椎症、肩関節周囲炎、上肢骨折等が原因として挙げられ、肩関節亜脱臼をきたし、同側手に浮腫を伴う場合にSHSと呼ばれる。


脳卒中片麻痺の5%未満に生じ、脳卒中発症後2週から3ヶ月に多く、5ヶ月を過ぎることはほとんど見られない。CRPSには運動療法が重要であるが、上肢麻痺が著明な場合は運動障害回復は困難で肩の痛みが主である。


患肢のアロディニアや痛覚過敏が強い症例での他動運動は患部より離れた場所のみであったり、自動運動のみ可能な場合もある。筋力維持・増強については疼痛を誘発させないように箇所や時期を考慮する必要がある。


また協調運動障害等の中枢神経系の機能異常が考えられ、運動再獲得が目標となることが重要である。



【拝読させて頂き感じる点】 


 本稿では難治性疼痛に対するリハビリテーションに対する概要、エビデンス、実践について挙げられている。難治性疼痛は治療現場において時折目にすることが少なくないことでしょう。


脳卒中後のCRPSについては多くの患者が痛みに悩まされ、それによる不安やうつ、睡眠が障害されることもしばしば見られる。運動療法で改善されることで更なるリハビリテーションの治療効果の増進につながるのではないでしょうか。



【最後に一言】


 本稿では脳磁図による幻肢痛に対するニューロフィードバック治療について紹介があり、脳活動のパターン分析のためにbrain compeuter interface(BCI)技術を活用しており、BCI訓練による幻肢の動きを患者へ直接フィードバックすることで疼痛を制御するけどニューロフィードバックシステムの開発が掲載されているため目を通して頂きたい。



執筆:本多竜也



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