高齢者と筋力

(221111配信)

高齢者と筋力

池添 冬芽

理学療法ジャーナルVol.56 No.3 2022.3 p291-300



【文献の要点】


・高齢者の筋力低下は基本動作やADLに制限をもたらす大きな要因となる。


・高齢者の筋力低下には、筋骨格系や神経系、代謝・内分泌系、また個人因子など様々な因子が関わる。


・フレイルやロコモティブシンドロームにおいても筋力低下が主の要因である。



【文献の基本構造】


 高齢者の筋力の特徴を握力、下肢筋力の点から説明。また高齢者の筋力低下のメカニズム、フレイルやロコモティブシンドロームと筋力低下の関わりを研究データ、表を提示し解説している。


【高齢者の握力と下肢筋力】


 握力は全身的な筋力や生命予後、健康状態の指標として用いられる。握力は握力計を用いて比較的簡単に測定が可能であり、数値のフィードバックも行いやすい。握力低下がADL制限のリスクを高める要因となるという研究結果があるが、ADLとの関係性は低いという研究もある。

 高齢者の下肢筋力低下は起立や歩行能力の低下に大きく関与しているが、筋力低下の程度は筋によって、年齢や性別でも異なっている。男性では膝伸展筋力は比較的保たれ、女性では股関節外転筋力の低下が顕著にみられるという特徴がある。



【フレイルとロコモティブシンドローム】


 フレイルの原因の1つに筋力低下があり、男性と比較し女性の方が筋力低下の発生頻度が高く、女性のフレイルの主要因と考えられている。フレイルには可逆性があり、運動によってフレイルが改善すると言われている。


ロコモティブシンドロームの悪化に関与する運動機能を調査した研究から、股関節屈曲筋力のみに有意差が認められた。加齢による筋萎縮は股関節屈曲筋である大腰筋にみられやすいことからも、ロコモティブシンドローム悪化予防には、股関節屈曲筋力の評価、介入の重要性となると考えられる。



【まとめ】


 加齢とともに筋力が低下する、また筋力低下が基本動作やADL制限の要因となることは想像しやすいだろう。高齢者の筋力低下のメカニズムや、加齢に伴う筋力低下がみられやすい筋を理解することで、より効率的、効果的な介入ができる。


フレイルやロコモティブシンドロームにおいても筋力低下は深く関与しており、予防の観点からも筋力トレーニングを含めた運動の定着、習慣化が重要である。退院、退所後にいかに運動を継続して頂くか、習慣として頂くかがより重要であると感じる。


運動の重要性を対象者に理解してもらうためにも、筋力と基本動作やADLとの関係や運動により筋力が向上、フレイルには可逆性があることを説明することで理解を得やすいと考える。


実際に総合事業へ参加して地域住民との関わりからも感じるところであり、本稿では研究データを多く取り上げているが、説得力を持たせるためにも研究データなどを用いることは有効である。



記事:ながちゃん




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