外側翼突筋の担う咀嚼力の調整と関節安定化機能
古泉貴章
理学療法ジャーナル Vol.55 No.6 2021.6 p623-627
【文献の要点】
・顎関節のインナーマッスルは外側翼突筋であり、顎関節の安定性や咀嚼力に関与している。
・外側翼突筋は上頭と下頭に分かれており作用が異なる特徴を持っている。
・顎関節症では、外側翼突筋がその作用を果たしている下顎の前突制限や側方運動の低下が多くみられる。
・外側翼突筋の機能低下は頭頸部の代償動作を伴い、頸部や肩甲骨などの位置関係に影響する。
【文献の基本構造】
顎関節の構造について
→顎関節の解剖と顎関節に関係する筋について説明。
外側翼突筋とインナーマッスル
→外側翼突筋の重要な機能、なぜインナーマッスルなのか説明。
評価
→疼痛の評価、外側翼突筋の抵抗検査の方法を説明。
臨床への応用
→顎関節症患者に対する外側翼突筋へのアプローチを紹介。
【著者の伝えたいこと】
・顎関節は頸椎や肩関節疾患にも影響してくるため理学療法士にも知識が必要である。
・咀嚼力や顎関節の安定に関与し触診も困難であることからも、外側翼突筋は顎関節のインナーマッスルである。
・顎関節症は外側翼突筋の機能低下が影響しており、アプローチにて疼痛軽減、アライメントの改善が期待できる。
・外側翼突筋の機能低下は頭頸部の代償動作を生み、頸部やその周囲への影響を及ぼす。顎関節の安定や咀嚼力のみではなく、外側翼突筋の機能は重要となる。
【文献を読んでみて思う事…】
顎関節やその周辺は言語聴覚士の分野というイメージがあったが、頸椎や肩関節への影響もあるため理学療法士
にも見る視点が必要。全身をみるということの重要性を改めて感じた。
【まとめ】
現在、有格者数は理学療法士が約20万人、作業療法士が約10万人、そして言語聴覚士が約3万6千人である。有格者数を比較すると言語聴覚士は半数以下であり、言語聴覚士が所属していない現場も少なくないのではないか。
また言語聴覚士が所属している現場では顎関節、咀嚼といった部分は言語聴覚士が担うところが多いではないだろうか。
本稿から理学療法士や作業療法士も臨床でみる機会の多い頸椎など他の部位への影響があることが分かる。運動療法を実施する上でも重要な栄養面にも関わる部分である。
ぜひ理学療法士や作業療法士も外側翼突筋を含めた顎関節の評価に目を向けてほしい。
記事:ながちゃん