脳卒中治療ガイドライン2021にみる再発予防・合併症管理
脳卒中治療ガイドライン2021にみる再発予防・合併症管理
小川 太郎
総合リハビリテーション Vol.50 No.3 2022.3 pp235-241
Key word:脳卒中,再発予防,合併症管理
★今回の記事はこんな方にオススメ!
・脳血管リハに関わる全てのセラピスト
・知識をアップデートしたい方
今回は脳卒中治療ガイドラインの中にある、再発予防・合併症管理についてピックアップした記事を紹介します。
ガイドラインは様々な分野で存在し更新され続けていますが、その都度、変更点について追うのも楽な作業ではないと思います。この度、脳卒中治療ガイドラインが2015版から2021版に更新されていますので、その内容について要点を絞って見ていきましょう。
【大まかな変更点】
今回は再発予防・合併症管理についての変更点を見ていきます。2015版→2021版では、大きな変更点として塞栓源不明の脳塞栓症や服薬アドヒアランスに関する項目が追加されていることです。再発予防については、高血圧や脂質異常症の具体的な治療目標が示されましたが、糖尿病についての大きな変更はありませんでした。
【変更点まとめ】
変更後の内容について、リハビリテーション職種に関わりそうな再発予防・合併症管理の内容についてまとめていきます。
●血圧
降圧薬の第一選択薬のうち、Ca拮抗薬、利尿薬、ACE阻害薬、ARBが推奨されるが、β遮断薬は推奨する根拠がない。
・脳梗塞
140/90mmHg未満を目標とし、脳血管の高度狭窄・閉塞がなければ130/80mmHgを目標とする。
・高血圧性脳出血
130/80mmHg未満を目標とし、再発リスクが高い場合は120/80mmHg未満を目標とする。
●糖尿病
二次予防における強いエビデンスはない。
一次予防においては、メトホルミンを第一選択薬として、GLP-1受容体作動薬、SGLT-2阻害薬の使用が推奨される。
●脂質異常症
脳梗塞再発予防では、LDL-コレステロール 100mg/dL未満、冠動脈疾患合併例では79mg/dL未満を目標とする。
●痙攣
虚血性病変・出血性病変によらず亜急性期以後に発症した痙攣については適切な診断ののち抗てんかん薬の投与が勧められる。
●深部静脈血栓症
間欠的空気圧迫法、抗凝固療法に加え、離床や理学療法の推奨が追加された。段階的弾性ストッキングは行うべきではない(予防効果がない)。
●服薬アドヒアランス
服薬アドヒアランス低下は、脳卒中のリスク管理を不十分俊、再発予防薬の効果を減弱させるため、脳卒中を有意に増加させる。
【Impressions】
全ての内容がリハビリテーションに関わる内容ではないかもしれませんが、知っておきたい内容が多いと思います。今回の内容で私が最も興味深かったのが、深部静脈血栓症について弾性ストッキングを行うべきではないと明確に否定されていたことでした。今までは当然のように行っていたことでも、ガイドラインでは否定されていた、ということは今後もあり得るかもしれませんね。そういったことを確認する意味でも、今後もガイドラインはチェックして行くべきであると感じさせられました。
明日からできること!
・ガイドラインに興味を持って、業務に関わり得る内容から熟読してみる!
文責:テツ@永遠の若手理学療法士