特発性正常圧水頭症

(20211003配信)

実践講座:特発性正常圧水頭症

二階堂泰隆

総合リハビリテーション Vol.49 No.6 2021. pp577-582


★今回の記事はこんな方にオススメ!

・特発性正常圧水頭症のリハビリテーションにヒントを得たい方


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こんにちは!毎日の診療で大汗をかいている‘テツ’です!


今回は特発性正常圧水頭症(iNPH;idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus)に関する記事を紹介します。

正常圧水頭症と言えば認知症・失禁・歩行障害の特徴を持つ疾患ですが、本記事は歩行障害・バランス障害の特徴を様々な観点から解説されています。


Key word:特発性正常圧水頭症,歩行障害,歩行評価,脳脊髄液排液試験,シャント



【iNPHの歩行障害・バランス障害】


 iNPHにおける歩行障害については以下の特徴が挙げられます。

①小股、②すり足、③歩隔の拡大、④すくみ足

などがあります。

これらの症状の責任病巣は不明ですが、脳室周囲の白質病変や皮質脊髄路との関連や、前頭葉関連の認知機能障害との関連も報告されていることから、広範囲の脳内神経ネットワークの機能低下によるものと筆者は推察しています。

 

バランス障害についてはSensory Organizing Testにおいて前庭負荷条件でのバランス障害が著明との報告などから、前庭障害に起因する可能性が考えられています。iNPHにおけるバランス障害は動的に出現することが多く、軽症であっても継ぎ足歩行などが難しいことが多いとされています。


ここまで歩行障害・バランス障害について述べられていましたが、この2つのワードを見て皆さんは何を連想するでしょうか?



【転倒】


歩行障害・バランス障害といったワードが出ると「転倒」を連想する方も多いかと思います。iNPHにおいて転倒リスク評価をすることは転倒予防の観点から重要です。

動的バランスが障害されるこの疾患では、動的バランスを主に評価するTimed UP and Go test(TUG)や、6分間歩行試験、Berg Balance Scale(BBS)、Functional Gait Assessment(FGA)などが易転倒性を評価するのに有用とされています。

通常、転倒といえば下肢筋力低下との関連性を考えることが多いと思いますが、iNPHに関しては下肢筋力低下が転倒のリスク因子に挙がらないことも特徴的です。iNPHに対する介入内容には普段我々が考える内容よりも工夫する必要がありそうです。



【タップテスト、シャント前後の評価】


タップテスト、シャント前後の評価はやはり上記した評価が主に利用されています。歩行障害の評価としてのTUG・6分間歩行試験と、バランス障害の評価としてのBBS・FAGが推奨されています。


本記事には評価結果について、タップテスト後よりもシャント術後で変化が大きいことや、シャント術後1週間時点ではタップテスト後と同程度の変化であること、両方を行っても改善が乏しい場合があるなどの文献を引用されており実際の評価時の考察に役立つと思います。



【Impressions】


本記事にはiNPHの歩行の特徴だけでなくパーキンソン病とiNPHの歩行の鑑別の仕方や、歩行・バランスともにタップテストやシャント術後に変化しやすい項目、更には臨床的に意味のある数値の差などについても触れられています。病態に関する知識から評価、評価結果の解釈の仕方まですぐに臨床に落とし込みやすい形で記載されているため、イメージがしやすい内容であったように感じます。

より具体的にiNPHについて知りたい方は是非本文まで!



●明日からできること!

・本記事を参考に、歩行障害・バランス障害に対するプログラムを練る!

・動的バランス改善のための介入方法について知る!


記事:テツ@永遠の若手理学療法士


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