加齢に伴う肩関節の変化

(20200615配信)

加齢に伴う肩関節の変化

谷口昇

理学療法37巻3号 2020年3月P269-276

加齢に伴う運動器の変化と理学療法の講座として連載企画である.

文献の構造

肩関節と加齢による変化というキーワードで読み進めるにあたり,統計や五十肩の語源が「はじめに」で書かれているので,文献を読み慣れていない方も読みやすい作りで書かれている.

肩関節の疾患と年齢−肩関節周囲炎症−腱板断裂の流れで書かれており,診断と治療がセットで各疾患別に書かれている.

五十肩の語源

江戸時代の俗語辞書-俚言集覧にて書かれている(当時の広辞苑のようなものらしい)

「50歳くらいで肩や腕が痛む形や時があり,時間が経てば薬なしで良くなる,長寿病」

江戸時代の平均年齢40歳では長寿病ながら,現在の平均年齢を勘案すると現代病とも言える.

表の肩関節疾患の好発年齢では

30歳未満,30−60歳,60代以降,70代以降,年齢問わず

で分けて年齢と好発疾患が書かれており,面白い切り口の為,是非見て欲しい.

腑に落ちたポイント

・凍結肩の治療

:放置すると半数に疼痛及び関節可動域制限が長期に遺残

疼痛コントロールが良好→関節可動域練習→数ヶ月でも改善しないと手術(関節包切離術)

現在では超音波ガイド下C5-6ブロックと併用した徒手授動術も成績良好

新しい治療も出てきており,凍結肩では疼痛コントロールが不十分な状態で,他動関節可動域練習を積極的に行ってはならない理由がわかる.投薬や注射による加療と併用して運動療法も実施される必要性は高い.

・腱板断裂の概要

:腱板機能不全による骨頭上方化が肩峰と衝突→微細な断裂→完全断裂

腱内の血流量も考慮する必要がある.血流の乏しい部分は骨のインピンジメント・関節内での圧迫を受ける為,微細な断裂の修復機転は難しい.

そもそも構造上にウィークポイントがあり,さらに治癒しにくい経過を辿るという事は解剖学に落とし込み理解する必要がある.

肩関節に焦点を当てており,病態の把握の入り口というような文献である.「おわりに」で谷口氏も述べているが,肩関節疾患の基本は「保存療法が中心」であり,薬物療法と運動療法に期待される部分は大きいと考える.だからこそ肩関節の基本構造に加えて,各疾患の病態変化や特徴を捉える必要性は非常に高いとこの文献から考えさせられた.


記事:ひわ

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