嚥下機能と全身機能の関連 誤嚥のメカニズム
杉山 岳史
理学療法ジャーナルVol.57 No.2
2023.2 p128-135
・加齢は摂食嚥下障害を悪化させる因子であり、高齢化が進むなかで増加が予想される。
・摂食嚥下の5期モデル、嚥下反射について理解する。
・頸部周囲へのアプローチだけでなく、基本動作の向上から嚥下機能の向上が期待できる。
はじめに、我が国における摂食嚥下障害、誤嚥と死因の関係や、環境や栄養状態やADLなども摂食嚥下障害、誤嚥性肺炎に影響していることを研究データなどから述べている。摂食嚥下の5期モデルから嚥下反射とメカニズムを解説している。さいごに、摂食嚥下と基本動作能力、ADL能力との関わりから、理学療法の役割、必要性について述べている。
先行期:食物と認識する期。意識や高次脳機能、食への意欲が保たれていることが必要。
準備期(口腔準備期):咀嚼、食塊を形成する期。歯や咀嚼筋の機能、唾液の分泌などが重要。
口腔期:咽頭期へ食塊を送る期。口唇の閉鎖、舌の機能が重要。
咽頭期:食塊が食道へ移動、食道入り口までの期。嚥下反射が起こる。
食道期:蠕動運動によって食塊を胃まで送る期。
普段の臨床においても、対象者の高齢化や誤嚥性肺炎の診断、既往歴を有する症例、摂食嚥下機能低下がみられる症例が多いと感じられる。
本稿では摂食嚥下や嚥下反射のメカニズムから解説しており、解剖生理から知識の復習にも活用できると考える。
その中で、姿勢やアライメント修正、頸部周囲へのアプローチなどから摂食嚥下に関わることもあると思うが、本稿のさいごでは、摂食嚥下機能と基本動作能力との関わりについて解説しており、基本動作能力の向上から摂食嚥下機能の改善が期待できると述べている。
高齢化に伴う摂食嚥下障害の増加が見込まれるなか、摂食嚥下分野においても理学療法士の必要性は高くなると考える。
記事:ながちゃん