わが国の慢性期医療の動向
小山秀夫
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION
第32巻・第5号(通巻382号)・2023年5月号 P424-428
Key Words:医療提供体制、口腔・栄養・機能訓練・リハビリテーションの一体的取り組み、DX活用、回復期リハビリテーション
本稿では日本における慢性期医療の動向に着いて述べられている。医療制度政策の議論点は、今後の展望については明確なビジョンが示されず、現状維持、医療抑制のため政策の実行があり、医療の質への検討が進んでいないことである。
リハビリテーションにおいては回復期リハビリテーション病棟における入院期間の短縮、高度急性期医療の拡充・強化であり、慢性期リハビリテーションは医療費削減のターゲットとなっている。
これに対して慢性期リハビリテーションの重要性についてのアウトカムが必要となり、その中心にあるのが老人保健施設であり、通所リハビリテーション、通所介護、訪問リハビリテーションの普及、セラピストの配置を推進していく必要があるのではないだろうか。
Ⅰ.慢性期医療の問題点
①日本における医療制度政策議論は明確なビジョンが示されず、現状維持の判断と医療費抑制政策のみが行われている。
②今後これ以上の医療資源への投入する経済的な余裕が確保できないのであれば、一層選択と集中の方策を進める頃が必要であるが、政治的決断が出来ていない。
③最重要である医療の質に対する継続的な検討が広範に進んでいない。
Ⅱ.リハビリテーション医療のかかわり
①回復期リハビリテーションは今後、微増傾向にあったとしても入院期間短縮化が求められる
②高度急性期・急性期機能を有する病院の入院リハビリテーションの強化が必要である。
③慢性期の入院リハビリテーションの月当たりの実施件数の制限は財政制約上の問題であり、慢性期リハビリテーションの必要性を科学的な証明が必要となる。
Ⅲ.対策
今後は②高度急性期・急性期機能を有する病院の入院リハビリテーションの強化。③慢性期リハビリテーションの必要性を科学的な証明。に加え、慢性期の通所、訪問リハビリテーションの中心である老人保健施設を評価してより一層の普及に努めることが重要である。
Ⅳ.リハビリテーション医療の果たす役割
回復期リハビリテーション病棟中心の考えからの高度急性期病棟、急性期病棟、地域包括ケア病棟、障害者病棟、老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホームにおいてのリハビリテーションの拡充が求められている。
その上で、通所介護リハビリテーション、通所介護、訪問リハビリテーションの普及、PT、OT、STの配置が推進されることが重要であり、それに関わる専門他職種との連携も同じく重要である。
前回の介護報酬改定で示された口腔、栄養、機能訓練、リハビリテーションの一体的取り組みを推進し、リハビリテーション分野でのDXを活用しloT やロポットの普及、ビックデータの解析やAIの開発等の発展も期待したい。
ここ数年での診療報酬改定によりここから先の日本医療の今後の方針が示されてきており、ビッグデータの集約から実践のフェーズに移行している。利用者や地域に必要とされる病院や施設、療法士として何ができるのか、何を重要にして日々の臨床に取り組むべきであるのかを知っていることが我々の職域の確保につながることがわかる。
医療、介護、障害における診療報酬制度についてそれほど強い興味が無かった方は私以外にも少なくないと思います。職場のトップだけが制度を把握していれば良いという考えもあると思いますが、知っている上で働き方や治療介入は変わってくると私自身の経験も踏まえて考えさせられるものでした。今一度、診療報酬制度が難しくて取りかかりにくい方は大まかな流れを学んで頂けたらと思います。
記事:本多竜也