運動と睡眠

(230929配信)

運動と睡眠

小島 将 内藤 翼 椿 淳裕

理学療法ジャーナルVol.57 No.8 2023.8 p921-927



【文献の要点】

・急性睡眠不足は脳や循環動態、筋機能などにネガティブな影響を与え、慢性睡眠不足はサルコペニアやフレイル、合併症の発症に繋がるリスクがある。

・身体活動量や活動の強度の増加が睡眠にポジティブな影響を与える。

・入院生活では同室者、設備による騒音、疼痛などから自宅生活と比較して睡眠時間や質の低下が生じやすい。



【文献の基本構造】

 本稿ではまず、急性的な睡眠不足と慢性的な睡眠不足に分け、それぞれにおける睡眠不足が身体機能や運動パフォーマンスなどに与える影響を述べている。次に、身体活動や運動が睡眠に与える影響、運動の種類で違いはあるのかなどを述べている。それぞれについては、研究や報告をもとに解説している。



【運動と睡眠の関係】


〇睡眠不足と運動


・急性睡眠不足:運動実施前の睡眠不足が運動パフォーマンス低下に影響するという報告もある。また、交感神経活動が亢進し、心拍数や収縮期血圧の増加、運動後の心拍回復の遅延などが生じる可能性がある。


・慢性睡眠不足:睡眠の時間や質の低下により、自律神経への影響から急性睡眠不足と同様に循環動態の変化に注意が必要となる。自律神経機能の低下により、抑うつなど精神状態との関係性も示唆されており、精神状態の悪化から睡眠障害と悪循環、重症化のリスクもある。



〇運動が睡眠に与える影響


 運動によりコルチゾール濃度の低下やセロトニン濃度の増加がみられ、睡眠に対しポジティブな影響を与える可能性があることが分かっている。世界保健機関(WHO)が発表しているガイドラインでは1週間に150~300分の中等度の身体活動、75~150分の激しい身体活動が推奨されている。


 また、有酸素運動やレジスタンストレーニング、太極拳やヨガなど様々な運動が一貫してポジティブな影響を与えるという報告もあるため、身体活動量などの評価を行った上で、患者自身が継続しやすい運動を提供することが重要となる。



【まとめ】


 リハビリテーションを実施する際、または、利用者や患者と関わる際に「夜は寝れているか」など睡眠状況の確認を行うことは多いと思う。また、寝不足などの睡眠不足がパフォーマンスに影響することは想像がつく。


本稿で述べられているように、睡眠不足は脳機能や自立神経、循環動態などに関与しており、介入する上で重要なリスク管理ともなり得る。具体的に睡眠不足がどのように身体機能に影響を与えるのか、運動や身体活動がどう睡眠にポジティブな影響を与えるのかなどを理解、把握した上で睡眠状況を確認することが重要となる。


まだまだ、睡眠と運動との関係についての研究は少なく、今後は運動のタイミングや組み合わせ、各疾患との関係など、詳細な検討、研究が期待される。



記事:ながちゃん


セラレビ無料メルマガに登録いただければ

・先輩のまとめたジャーナルレビューをメールでお届けします
・週1回(毎週金曜日にお届けします)

是非、無料で勉強できる環境を整えてください

メルマガの詳細