歩行と走行に着目した腸腰筋の役割
治郎丸卓三
理学療法ジャーナル Vol.55 No.6 2021.6 p666-671
【文献の要点】
・腸腰筋はtypeⅠとtypeⅡ線維の割合が半々で持久性と瞬発性を兼ね備えているが、加齢により委縮しやすい筋である。
・腸腰筋には歩幅や歩調を増大させ歩行速度を速める役割を持つ。
・走行速度とも関係がある。短距離走選手特有の走り方は腸腰筋活動が活発であり、高い疾走速度を生む要因となっている。
・速く走るための走り方は、短距離、長距離どちらにも推奨できる。
【文献の基本構造】
腸腰筋について
→大腰筋の2種類の部位や腸腰筋の持つ役割を説明。
歩行速度との関係
→これまでの研究から歩行速度との関係を説明。また認知機能や健康寿命への関与も。
歩行、走行時の筋活動
→腸腰筋がより活発に活動している歩行周期、速度による活動の変化を説明。
速く走るためには…
→速く走るためのポイント、また走り方を解説。
【著者の伝えたいこと】
・腸腰筋の部位、作用を理解することで歩行や走行への関与をイメージしやすくなる。
・腸腰筋は歩幅や歩調、歩行速度の増大に重要。歩幅と認知機能の関係や加齢により筋委縮しやすい筋であり、腸腰筋の機能を維持、向上させることで健康寿命が延ばせる可能性がある。
・速く走るためには骨盤を過度に前傾させず、腸腰筋を活発に活動させる「脚を前でスイング
する」り方が重要である。
・今後腸腰筋をより活発に使用できる走り方、またそのトレーニング方法が確立されること
で、日本人が諸外国選手と対等に競うことができるのではないか。
【文献を読んでみて思う事…】
・歩行から走行まで関わる内容であり、アスリートから高齢者まで対象となる症例の幅も広
く、すぐに臨床で活用できる内容となっている。
・短距離走をはじめ陸上競技においては世界との差があるのが現状。しかし、「腸腰筋」がその状況を打開できる可能性を持っていることは興味深い。
【まとめ】
・歩行や走行における腸腰筋の活動、役割、そして重要性を学習できる内容である。
・アスリートから高齢者まで活用できる内容であり、幅広い領域で働く理学療法士におすすめできる。
まとめ:ながちゃん