外来リハビリテーション

(220715配信)

外来リハビリテーション

菅原英和

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION

第31巻・第6号(通巻369号)・2022年6月号 P512-518


Key Words:外来リハビリテーション、生活期リハビリテーション、回復期リハビリテーション病棟、就労支援、脳血管障害、痙縮



【アブストラクト】


Ⅰ.外来リハビリテーションの役割


 回復期リハビリテーション病棟入院中に、脳卒中発症後の機能、能力はほとんど回復されるが、少なからず退院後も回復する可能性がある。また医療の効率化により入院期間の短縮により回復期段階の途中で退院を迎えるケースも増えてくることが予想される。その際に外来リハビリテーションの出番となり、その代表例を挙げる。



 『①失語症や高次脳機能障害』


失語症は症状や回復過程にばらつきが有り、個別的に課題設定を行う必要があり、概ねの症状が安定まで外来リハビリテーションにて個別での対応が望ましい。


これには失語症を抱えながらその人、個人の新しいコミュニケーションの形を確立し、生活を営むまでに年単位での介入が必要経費となることもあり、機能回復以外に支援方法やその引き継ぎが重要である。



 『②身体機能が長期的に回復するケース』


片麻痺などは3−6ヶ月、身体機能回復と考えられているが、体幹失調や両片麻痺、片麻痺によるバランス障害は回復期リハビリテーション退院後も長期的に回復することが認められている。


これには適切な難易度のバランス訓練を反復することで姿勢制御に関するネットワーク再構築による生活活動へ汎化させるために相当な時間を要するからである。



 『③痙縮等の阻害因子を取り除くことで麻痺が回復するケース』


退院時に痙縮が阻害要因とならない場合でも退院後の生活変容や行動範囲の拡大に伴う悪化が考えられ。痙縮の悪化をそのままにしておくことで、回復期で獲得した機能や能力の維持が困難になる場合もあり、観察と早期の対応が必要である。


 その他の役割に自宅生活定着支援(自宅環境でのADL、IADL拡大支援)があげられる。セルフケア以外での生活管理、家事、育児を含む自己管理能力や遂行機能を要する場面が多くなることで、処理能力が易疲労性となりやすく、適切な休息を取る必要があり、これが欠けることで自信の消失や焦燥感を助長するリスクもあるため専門職による負荷量の調整や段階的な生活範囲拡大を指導する必要がある。



Ⅱ.回復期リハビリテーション病棟併設の外来リハビリテーションのメリット


 はじめに退院時の情報共有、連携がある。院内での電子カルテを直接外来スタッフへ引き継ぐことも可能であり、細かな課題の達成状況や今後の課題、家族の想いなどを伝達することで外来リハビリテーションへのシームレスな移行が可能となる。


また回復期リハビリテーション病棟の訓練室には豊富な訓練機器や装具等があり、それらを利用することで細かな課題設定の訓練が提供出来る。資源のみでなく、院内在中の義肢装具士による装具の調整や修理、更生用装具の作成が行えることも利点である。



【勉強となった点】


 我々が入院中に使用している資源や多職種との連携が外来リハビリテーションにおいては必ずしも当たり前の環境ではないことに改めて気付かされ、それにより退院後も安心して生活を送ることができる患者が少なからずいることがわかった。


 しかし回復期リハビリテーション病棟に併設されている外来リハビリテーションには患者側・病院側ともに多くのメリットがあることがわかるが、全国的には1/3程度も満たないことが今後の課題ではないだろうか。



【最後に一言】


 これからの日本の医療制度では入院期間の短縮が進んでいくことが考えられる。その上で外来リハビリテーションという関わり方が患者の生活支援に重要な意味を持ってくることも考えられる。そのためには回復期や生活期での役割を明確にして次に引き渡すことも考えていかなければならない。

 


執筆:本多竜也





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