妊産婦の身体変化とリスク管理
吉田 志朗
理学療法ジャーナルVol.56 No.4 2022.4 p450-454
・筋骨格系や姿勢など身体の外からも分かりやすい変化に加え、血液や臓器と身体の内面の変化もみられる。
・妊娠中の運動は心疾患や妊娠高血圧症候群などを認めない場合、有酸素運動が望ましく、健康維持や増進が期待できる。
・切迫流産や早産、帝王切開の術中、術後と静脈血栓塞栓症への予防が必要である。
本稿では循環血液量や心拍出量・心拍数の変化、仰臥位低血圧症候群など外見に表れにくい妊娠に伴う身体の変化を解説している。
次に、産婦人科診療ガイドライン産科編2020から妊娠中の運動について述べられている。最後に、静脈血栓塞栓症の予防のための母体管理について筆者らが臨床で検討した内容を踏まえ解説している。
前述した通り、妊娠に伴い循環血液量や心拍出量、心拍数の変化やインスリン感受性の低下など様々な身体の変化が生じる。
仰臥位低血圧症候群では、ある一定時間の仰臥位で、増大した子宮が下大動脈を圧迫し静脈還流量が減少することで血圧が低下する。胎盤への血液供給量も減少するため胎児は低酸素状態に陥る。
対処法はすぐに左側臥位をとることであるが、運動療法を行う際には仰臥位の時間を短くする配慮が必要となる。このように母子ともに影響がみられるため、運動療法を行うにあたり身体の変化、リスクの理解が重要である。
妊娠に伴う筋骨格系や姿勢の変化は理学療法士として運動学、身体力学的な側面からも捉えやすいのではないかと考える。
本稿では、循環血液量や心拍出量・心拍数の変化、仰臥位低血圧症候群、静脈血栓塞栓症など外見に表れにくい妊娠に伴う身体の変化を解説している。
母子ともにリスクを伴うため、運動療法や母体の管理をする上では理解する必要がある。本稿より、身体への変化からガイドラインで推奨される運動、運動療法を実施する上でのリスクの理解に繋げたい。
記事:ながちゃん