特異的・非特異的腰痛の患者立脚型アウトカムに関する使用状況と認識についての調査
末廣忠延,浅田啓嗣,大石敦史,瓜谷大輔,公森隆夫,宮﨑純弥,橋田浩,増井健二,堀口達也,川端昭宏
理学療法学 第50巻第5号 208-216頁(2023年)
腰痛に対して、関節可動域や筋力といった客観的評価に対して、患者目線の主観的評価である患者立脚型アウトカム(Patient-reported Outcome Measure:以下PROM)は重要である。
本文献では、腰痛に対してPROMの使用頻度や利点、使用しない理由などを、性別、年齢、最終学齢、経験年数や所属施設の種類、腰痛患者の担当頻度等の関連性を報告している。
WEBアンケートでの集計のため、20代から60代以上のセラピストからのPROMの使用に関する調査結果は、臨床経験年数と単純な関係性があるわけではない部分が文献の面白いポイントであると感じた。
(n数も少ないので単純比較ができない部分を含む)
表2で表される患者立脚型アウトカムの使用頻度や表3患者立脚型アウトカム使用者の基本属性と各PROM使用頻度の相関は一覧表となっているため一読をお勧めしたい。
PROMの具体的な種類の把握や使用頻度の高さを把握することで、評価の際に自分以外のセラピストが、どのような評価項目(特に主観的な評価)を使用しているのかがわかる、使用すべきPROMの1つの指標として参考にしたい内容である。
・PROMよりも機能的評価の優先順位が高いこと、個別性のクリニカルリーズニングを実施するためPROMの必要性を感じないことが、PROM不使用者の理由がある
→客観的評価に加えて主観的な評価を行うことは、非常に重要なことはセラピストとして共感される部分であると思う。しかし、職場においてはすでに医師と連携して決定した評価項目がある場合には、上記意見も頷ける。
セラピストから医師や他職種に対して、国際的なガイドラインで推奨されているPROMの中で、⚪︎⚪︎を評価項目に追加したいというような具体的な提案が出せる機会の重要性を感じた。
・PROMの使用することによるデメリット
時間と知識の不足、管理面に関して、各評価項目の理解から適切な選択の難しさや、結果の解釈の仕方が提起されている。
→客観的な評価学の項目と問題点は同じであると感じる。
評価項目の理解なくして、患者さんごとに適正な選択は難しいため、卒前・卒後教育で知識の連携や、教育の継続に関する部分は、学校教育だけでなく臨床実習での連携や、現場での教育の継続と早急に考えるべき点である。
「はじめに」で述べられているが、日本では腰痛の生涯有病率80%強であり、腰痛にかかわる医療費は、職業性の腰痛で年間820億円以上医療費がかかっており、理学療法ガイドラインでは非特異的腰痛に対して、運動療法・関節モビライゼーション・関節マニプレーションが条件付きで推奨され、エビデンスも弱気から非常に弱いである。
だからこそ、セラピストとしてどのような評価を行うことが望ましいのか、それは経験による視診や動作分析だけに限らず、PROMによる患者目線での主体的評価を織り交ぜて考える必要性がある。
この文献はその問題点を提起しているだけでなく、主観的な評価項目の選択に悩むセラピストは、是非、本文献の一読をお勧めしたい内容である。
記事:ひわ