回復期リハビリテーション医療の課題と展望

(220506配信)

回復期リハビリテーション医療の課題と展望

近藤国嗣

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION

第31巻・第2号(通巻367号)・2022年4月号 P309-317


Key Words:回復期リハビリテーション医療、重症度、アウトカム


【アブストラクト】


Ⅰ.はじめに


 2000年より厚生労働省より制度化された回復期リハビリテーション病棟は「脳血管疾患又は大腿骨頚部骨折等の患者に対して、ADLの向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に行うための病棟であり、回復期リハビリテーションを要する状態の患者が常時8割以上入院している病棟」とされている。


2020年度診療報酬改定では、「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」が対象疾患に追加された。これにより循環器疾患に対するリハビリテーションの集中的介入が考えられる。



Ⅱ.高齢化、重症化する中での早期転棟をどう進めるか


 2020年度診療報酬改定による重症化の基準となる日常生活機能評価又は機能的自立度評価の割合が引き上げられた。また2021年度は回復期リハビリテーション病棟に入院する廃用症候群を除く、入棟患者の平均年齢が上昇し高齢化が進んでいる。


 2020年度診療報酬改定により発症から入棟までの日数制限が廃止されいほが長期化したが、中央値は大きく変動はなかった。これは全身状態安定に2ヶ月以上の治療期間を要し入棟できなかった患者が制限廃止により入棟可能となったことが考えられる。



Ⅲ.入棟時期について


 整形外科系疾患では、急変・死亡率が低く、手術症例は創部安定が確認された段階で自院の回復期リハビリテーション病棟へ転棟し、他院からの受け入れ事例では抜糸直後の段階で転院が可能となる。これには病・病連携や地域医療連携パス強化が必要である。


 脳血管系疾患では再発リスクへの対応が重要であり、全身状態安定した症例では早期に再発対応可能な急性期病院が併設された回復期リハビリテーション病棟へ転棟可能である。他院から受け入れ症例は発症後2週間程度経過後からの入棟が望ましい。


 廃用症候群は急変・死亡率が高く、急性期病院が併設されていない回復期リハビリテーション病院への早期転棟は患者リスクが大きく、症例個々での対応が必要である。



Ⅲ.実績指数を高めるために


 実績指数を疾患別に見た際には、2021年度調査より脳血管系、整形外科系、廃用症候群となり、脳血管系弛緩患者が多く入棟することが実績指数を高めることとなる。


 脳卒中患者は発症早期での機能障害改善が見込めやすいことや、整形外科系疾患は疼痛増強時期ではADLは低く、有無にかかわらず、創部・全身状態が安定している場合は早期入棟が進められる。


 リハビリテーション科専門医が存在することが、治療技術の向上には必要である。現場では現場への専門医の配置は少ないが、新専門医制度の基本領域にリハビリテーション科専門医が含まれたため、専攻する医師が増加している。



Ⅳ.分母としての入院期間をどうするか


 回復期リハビリテーション医療の個別ADL・活動課題改善のための標準的評価や治療介入は確率されておらず、筆者施設では疾病や障害、改善状況に応じてリハビリテーション治療(内容、時期、頻度、実施時間、チームアプローチ等)を標準化しており、進歩と普及が必要である。


 その他に入棟期間短縮にはリハビリテーション治療技術向上のみではなく、退院支援を入院時や早期から組織的に取り組む必要がある。



Ⅴ.高額薬品の使用について


 2021年の回復期リハビリテーション病棟協会による調査から約90%の医療機関では入院判定基準に薬剤費制限を設けている。そのうち約20%の機関では高額薬剤使用患者の入院を不許可していることがわかった。


これらは抗悪性腫瘍薬が最も多く、免疫抑制剤・骨粗鬆症治療薬、生物学的製剤が続く。抗悪性腫瘍薬は、地域包括ケア病棟では包括除外薬であり、同一機関のリハビリテーション実施が一考と思われる。



【勉強となった点】


 医療保険全体の観点から、回復期リハビリテーション病棟の本来の役割であるADL向上と在宅復帰に加え、急性期入院期間短縮を補完するから役割が追加されてきている。


これは医療だけにとどまらず介護保険分野にも波及する話であり、急性期からの回復期へ早期転院から、回復期、地ケア病棟からの在宅復帰により軽症例の早期在宅復帰が加速していくことが考えられる。



【最後に一言】


 本稿では回復期リハビリテーション病棟を中心に課題と展望を述べられているが、これは前後する急性期・地域包括ケア病棟、在宅を含む介護保険分野にも関連する話であることを理解して全てのセラピストがそれぞれの役割を明確化して臨床に臨む必要があることを再確認していただきたい。


 

執筆:本多竜也




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