男性における骨盤底機能と排泄機能障害
井出 志正
理学療法ジャーナルVol.58 No.3 2024.3 p319-327
・骨盤底機能は体幹や股関節の機能と関連するため、指導や治療においても体幹や股関節なども含めた機能評価が必要である。
・骨盤底筋トレーニングでは代償運動がないか、触察にて適切な筋収縮が得られているかなど評価、フィードバックを行い、指導していく。
はじめに、本邦における前立腺がんの罹患数や合併症である腹圧性尿失禁の割合、骨盤底筋トレーニング指導の現状などが述べられている。次に、前立腺全摘除術後尿失禁症例に対する評価と理学療法について、実際に筆者が経験した症例から解説している。
さいごに、骨盤底筋トレーニングのポイント、骨盤底筋トレーニング指導の成績を筆者の経験から述べている。
指導のポイント
尿失禁場面は、臥位動作→座位動作→立位動作の順で多いことがほとんど。すべての姿勢で骨盤底筋群が機能することが重要。患者ごとに失禁場面は様々であるため、実際の失禁場面を想定した指導を行う。
運動量
骨盤底筋群は概ね遅筋線維であり、適切な方法で実施できていれば筋肉痛は少ない。適切な方法が習得できれば回数制限なく実施を勧めている。
収縮の確認
エコーやMRIがない場合は触診にて筋収縮を確認する。
尿失禁や骨盤底筋群については女性を想像することが多いが、前立腺がんの本邦の罹患数は男性で1位であり、前立腺がん術後の合併症で尿失禁が残存するケースも多いのが現状であり、男性女性問わず問題となるケースが多い。
他の疾患や症状などに併発しての尿失禁などに関わることはあるが、積極的な介入まで自分自身も行ったことがなかった。本稿では実際に筆者が経験した症例から評価、理学療法アプローチまで解説しており、術前から術後までの一連の評価や理学療法の流れを参考にできるのではないかと考える。
今後、前立腺がん患者数の増加がみられるなか、適切な排尿機能評価が行えるよう、多職種での連携、骨盤底筋トレーニングが指導できるセラピストの育成が重要である。
記事:ながちゃん