リハビリテーション診療で知っておくべき口腔問題

(20211112配信)

リハビリテーション診療で知っておくべき口腔問題

吉村芳弘

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第30巻・第10号(通巻359号)・2021年9月号 P1004-1011


Key Words:オーラルフレイル、オーラルサルコペニア、口腔機能低下症、低栄養、医科歯科連携


【アブストラクト】


Ⅰ.加齢の影響

Ⅱ.疾患の影響

Ⅲ.病院関連の口腔トラブル

Ⅳ.リハビリテーション医学における口腔問題

Ⅴ.口腔内トラブルへの介入

Ⅵ.医科歯科連携


【内容要約】

 リハビリテーション医学において口腔機能面は重要であるが、臨床ではしばしば軽視されることがある。口腔状態の悪化は加齢、疾病による口腔機能の低下、生活習慣による口腔疾患、フレイルのリスクと深く関わりがあり、口腔トラブルを引き起こす関連因子について述べられている。


 加齢によって歯数や咬合力、口腔筋の筋力低下、などが挙げられる。それらは身体機能低下、サルコペニア、死亡率と関連づけられることがある。近年オーラルフレイル、オーラルサルコペニアなどの概念が提唱され、地域の高齢者の身体的フレイルや嚥下障害、栄養不良、死亡率などの指標とし、重症化予防の効果がある。

 

疾患面では有病率の高い歯周炎が挙げられ、糖尿病との関連が考えられる。糖尿病患者の歯周炎罹患率は多く、高血糖の程度が歯周炎の重症度には関係性が示されている。


 次に病院関連の口腔問題があり、これには入院中の疾病治療、手術、気管内挿管、セルフケア能力低下、医療スタッフによるケアの欠如、薬物、医原性因子などが関連する。呼吸管理の為に気管挿管される事で、口腔状態、機能低下、院内感染リスク、QOLの低下がある。またICUに入院中の患者は、歯周病有病率が高く、悪化リスクもある。しかしICU患者の口腔衛生ケアの重要性は高いものの、急性期医療現場での医療スタッフの優先順位が低いことがアンケートより示される。また介護施設でもスタッフのケア順位からも、口腔ケア以外が上位に挙がる傾向にある。これより医療スタッフに対する口腔ケア管理の教育・実践プログラムが重要である。


 リハビリテーション患者に中にも口腔問題を抱える症例は少なくない。口腔内の状態悪化、機能低下は義歯装着、咬合力、咀嚼能力に影響し、それによる栄養障害の主な原因となる嚥下障害を誘発する可能性を含む。口腔問題の早期発見による治療介入により身体機能、認知機能低下の予防や進行を遅延させることでリハビリテーションの治療成果を向上させることにつながる。


 口腔内トラブルへの介入ではADLだけではなくQOLの向上が目標である。咀嚼、唾液分泌、嚥下機能の強化プログラムは口腔機能を改善に効果的にである。口腔機能トレーニングに合わせて栄養補助食品を取り入れる事で栄養不良な高齢患者にとって栄養状態の改善に効果を与える。


 医科歯科連携はリハビリテーションにおいても重要である。周術期の口腔機能管理は、術後の肺炎リスク軽減させる。しかし現時点では医科歯科連携や口腔衛生管理の知識は不十分である。また歯科医師は口腔疾患を主に取り扱い、一般的な健康問題面へ注視しない傾向にある。したがってリハビリテーション治療を進める上で、口腔問題の早期発見、歯科医師、歯科衛生士による早期の口腔衛生管理、医歯薬連携を実施する必要がある。


 これらより口腔問題とその要因を解明することがリハビリテーション治療の効果を最大限に引き出し、そのために多職種連携による口腔ケアアプローチが必要ではないか。


【読んでみて感じた点】


 病院リハビリテーションに従事し、口腔ケアの必要性を患者、家族へ説明することも少なくない。しかし病棟では看護師による口腔ケアが中心であり、リハビリテーションにおいてもセルフケアの一項目に過ぎないと関心が低いと自覚もある。


 本項を拝読しリハビリテーション治療と口腔問題の相互的な関係を改めて再認識することができた。またこれを実践するかも必要を感じている。その為にはセラピストだけではなく、医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士の多角的な視点が必要である。


 ADLだけではなくその先のQOLの向上が最終目標であることを忘れてはいけない。


【まとめ】


 担当している症例や家族、また自身の家族の口腔機能、口腔ケアについて再確認する上で本項は導入しやすく、口腔問題が引き起こす負のスパイラルの複雑な相関関係を図を用いて理解できるものである。

 ぜひ明日からの臨床に役立てて頂きたい。


執筆:本多竜也



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