人工関節置換術後の軟部組織への考慮 人工膝関節

(221218配信)

人工関節置換術後の軟部組織への考慮 人工膝関節

池野 祐太郎

理学療法ジャーナルVol.56 No.7

2022.7 p807-812



【文献の要点】


・人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty: TKA)

・TKAにおける侵襲する軟部組織、関節内進入法の理解

・皮膚や筋組織、膝蓋下脂肪体などそれぞれの組織に合わせた理学療法の実施



【文献の基本構造】


 はじめにTKAにより侵襲される軟部組織、各関節内進入法におけるメリット、デメリットを表と合わせて解説している。次に、筆者がTKA後の理学療法を実施にあたり特に重要とする軟部組織について、軟部組織別の理学療法、介入についてのポイントや注意点などを解説している。



【軟部組織別の理学療法のポイント】


〇皮膚組織


 皮膚の癒着、伸張性低下が膝関節可動域制限に高い割合で関与していると言われている。創部の状態に注意しながら皮膚状態に合わせた介入、皮膚の滑走性や可動性に対する介入も必要となる。


〇筋組織


 大腿四頭筋の機能不全を呈する。筋発揮の促すことは重要であるが、過度な負荷となると筋性疼痛や筋緊張の亢進を招く可能性もあるため注意が必要。


〇膝蓋下脂肪体、膝蓋上包


 炎症や癒着により、疼痛や可動域制限が生じる。TKAによる切開、術後の疼痛や運動量の低下などから柔軟性の低下がみられる。早期からの介入が必要である。膝蓋下脂肪体、膝蓋上包の柔軟性改善の介入方法については図(写真)にて解説あり。


〇神経組織 伏在神経絞扼障害


 内側広筋斜走繊維、大内転筋のスパズムにより伏在神経障害を呈する場合がある。術後の可動域制限に加え、大腿内側から膝関節内側部の疼痛や大内転筋の圧痛、膝関節内側から下腿内側部の感覚鈍麻などを有する場合に伏在神経絞扼障害を疑う。伏在神経絞扼障害に対するアプローチの例を図(写真)にて紹介している。



【まとめ】


 TKAの術式により軟部組織の侵襲部位は異なるため、関節内進入法や侵襲を受ける組織の把握は重要となる。術前から疼痛により膝関節の関節運動や活動性の低下などから筋をはじめ、様々な組織への影響があると考える。術後においても創部の皮膚癒着、柔軟性の低下、また術前同様に不活動性などにより、軟部組織に起因した疼痛や可動域制限も多くみられるため、評価から問題となる軟部組織への介入が必要である。医師や日々のケアにあたる看護師などと連携を取り、軟部組織の状態を確認し介入することが望まれる。




記事:ながちゃん

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