嚥下造影検査でわかる所見
瀬田拓
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION
第31巻・第10号(通巻373号)・2022年9月号
P938-943
Key Words:嚥下造影検査、摂食嚥下リハビリテーション、健常者、異常所見
Ⅰ.嚥下造影検査の目的
(1)嚥下障害治療の特殊性
嚥下障害治療の中心にはリハビリテーションによる治療があり、薬物療法、手術療法、刺激療法等も併用し治療計画を立てている。
リハビリテーション治療では改善・回復の理論は、過負荷の原則、動作学習、活動機能構造連関、脳の可塑性等がキーワードとなる。
摂食・嚥下リハビリの治療戦略上重要なのは現状で食べられる方法を見つけることである。
(2)嚥下造影検査の目的と特性
臨床で行われる検査に嚥下造影検査(VF)がある。日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会によると、VFは腫瘍等の診断に用いられ、咽頭・食道造影に加え、運動学的見地から機能的診断を行うという意義を持った独自の方法論で行うべきであるとされる。目的は大きく2つ挙げられ、症状と病態の関係を明らかにすること、食物・体位・摂食方法等の調節により治療に反映させることである。しかしVFは疾患名の特定に有効な検査法とは言えず、VF単独で機能予後推定できるものではないというものだ。
Ⅱ.嚥下造影検査で撮像される構造
摂食嚥下の機能評価のためにVFから読み取れるべき構造物には、舌背、奥舌、鼻腔、口蓋、口蓋垂、口蓋の高さ、上咽頭、中咽頭、下咽頭、喉頭、気管、舌骨(体)、喉頭蓋谷、喉頭蓋、梨状陥凹がある。これらの正常構造に加えて、腫瘍や粘膜の腫脹等の構造に変化をもたらす病変まで読み取れることが望ましい。
VF検査の主な狙いは嚥下に関連する構造物の動きと、食塊(造影剤)の移動状況を把握することである。これにより異常構造は偶然に発見できることもある。
Ⅲ.健常者の嚥下造影
健常者の口腔内の動きを把握し正常動作を学習できる動画が掲載されている。ここにはバリウムクッキー、バリウム水の固体、液体を嚥下する様子が確認でき、嚥下時の舌骨運動についても写真や動画よりイメージがしやすい。
Ⅳ.嚥下造影検査の異常所見
VFにより異常所見の有無を判断するには「造影剤(食塊)の動き」と「構造物の動き」の一つ一つを観察・評価できることが求められる。この細かい項目については日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会による嚥下造影の検査法(詳細版)を確認してほしい。
また異常所見を確認できたならば、その異常所見に関連した動きまで丁寧に評価する必要がある。
本稿ではVF検査について触れられており、普段目にしない専門職にとっては異常の有無を判断する前に正常の口腔内の動きから確認することが必要である。そこで本稿に添付されている動画が正常動作のイメージを掴むために有効でした。目視で確認できない部分はイメージを持つことが難しく、臨床で直接評価や訓練以外で食事姿勢の調整や指導を行うためにも非常に役立てることができる内容であった。
摂食嚥下におけるVF検査だけではないが、動作や画像所見を理解するためには正常動作の理解が不可欠です。専門職でなければVF所見を目にする機会も少なく、検査の実施には設備が必要であり、生活期で活躍する先生方や学生方はさらに拝見する機会は少ないのではないでしょうか。
本稿ではVF検査の理解の導入にはイメージを持ちやすいものであると思います。興味のある方はぜひ動画も合わせて一読してみてはいかがでしょうか。
執筆:本多竜也