栄養評価としての骨格筋評価
赤澤直紀
理学療法学第50巻第2号P42-50(2023)
低栄養とサルコペニアにおける骨格筋評価として、低栄養とサルコペニアの関係性、ADLの低下などの不良予後に繋がると知られている。そのため、昨今の臨床の現場では、理学療法士には低栄養の把握が求められている。
この論文では骨格筋評価の結果、理学療法と栄養管理の視点から、骨格筋評価の中でも筋肉量の評価に焦点を置いている内容である。
・ADL
・転帰先、生存のアウトカムに負の影響を与える
・理学療法士の筋肉量の評価を行うにはBIA法による筋肉量の評価が重要な位置を占めている。
・骨格筋は大量の水分を保持している(筋量の75%)、そのため浮腫などのケースは過剰な水分が筋肉組織に貯溜し筋肉は過水和状態となり、BIA方では筋肉量が過剰評価することを示すこともある
・大腿四頭筋は加齢や廃用の影響を受けやすい筋であり、大腿四頭筋の筋肉量は身体機能、歩行能力、ADLと関連している
・2021年に国際リハビリテーション医学会から報告された新たなサルコペニア診断基準
超音波画像診断装置で測定された大腿四頭筋(大腿直筋と中間広筋)の筋厚(Sonographic
Thigh Adjustment Ratio:以下,STAR)が筋肉量の評価2 種の BIA 装置では ICU 入棟 10 日間における筋肉量の減少が反映されなかったのに対し、超音波画像診断装置による筋肉量の
評価ではそれらの減少を反映していた。
このSTARではアジア人が研究対象とされておらず、アウトカムにどのような影響を与えるのか、既存のカットオフ値が妥当なのかを検証する課題が残されている。
:アジア人のアウトカムがまだ不十分ながら、大腿四頭筋の筋肉量の評価の妥当性は高いと考える。具体的なカットオフ値は、いずれアジア諸国の各国家単位で研究報告がなされる可能性が高いため、さらなる追加研究結果に期待する。
研究機関や大学病院等では低栄養状態とサルコペニアの関係性を大腿四頭筋にて評価を行い把握することは可能と考えるが、在宅や生活期の医療現場では、握力等の結果や、体重、 BMI も重要な栄養指標となることが続くと考える。
脳卒中患者では肥満者の方が低体重者よりも ADL や生存予後が良いことが報告されているが、その成因は未だに明らかになっていない。
さらに糖尿病、喫煙、がんの有無などを統計学的に補正した経過でも、肥満・脳卒中患者の予後が標準体重の患者よりも良いことが報告され、正の関連性があることが報告されている。低栄養=悪、肥満=悪ではなく、理学療法士として、筋力や栄養状態の把握、食事量、検査結果等の複合的な解釈が必要になると改めて理解できた。
記事:日和