誤嚥・喉頭侵入の解釈と対策

(221223配信)

誤嚥・喉頭侵入の解釈と対策

柴田斉子

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION

第31巻・第10号(通巻373号)・2022年9月号

P944-950

Key Words:誤嚥、喉頭侵入、嚥下造影検査、Penetration-aspirationn scale



【アブストラクト】


Ⅰ.はじめに


 誤嚥と喉頭侵入は食塊が気道に侵入することをさし、生体に与える影響は食塊の深達度によって異なる。定義ついて喉頭侵入では、深達度が声門上まで、誤嚥は声門を越えて下気道に達するものとなる。不顕性誤嚥の場合は、むせ等の所見がなく直接訓練や食事中の誤嚥を判断することは難しいため注意を要する。


 誤嚥性肺炎の発症に関与する要因は、誤嚥物量、誤嚥物の組織侵害性、誤嚥物に含まれる細菌数、宿主の免疫能および肺組織の状態等がある。しかし誤嚥が起きたとしても咳嗽等で気道より排出可能であれば発症率は低下する。そのため誤嚥・喉頭侵入を確認した際は顕性か不顕性、誤嚥物の気動より排出できる能力の有無、誤嚥しないための代償手段は何かを考えることが必要である。



Ⅱ.VF検査で誤嚥・喉頭侵入をどのように評価するか


 VF検査では、側面像より喉頭蓋、披裂部、声門の位置を確認し、誤嚥・喉頭侵入の有無を観察する。これらが確認出来るタイミングは嚥下前、嚥下中、嚥下後が考えられる。


 嚥下前誤嚥が認められるのは咽頭に流れ込む食塊が直接もしくは梨状窩を経由して気動内流入し、早期咽頭流入があり、嚥下反射惹起不良がある場合である。


 嚥下中誤嚥は嚥下反射が惹起され喉頭が挙上し安静位に戻るまでの間に生じる。喉頭挙上の遅れがあり、喉頭挙上期に食塊が咽頭を通過する間に食塊の一部が気動内流入する。また食塊の咽頭通過が悪く、中咽頭に食塊が多量に残留すると、喉頭下降期に咽頭閉鎖が解除されたタイミングで食塊が気動内流入することもある。


 嚥下後誤嚥は、嚥下後に梨状窩に残留した食塊が披裂間切痕や披裂喉頭蓋ひだを乗り越えて気道に流入する。


 誤嚥・喉頭侵入の有無、食塊の深達度、気道から排出されたか否かにより評価することができるPenetration-aspirationn scaleがあり8段階で構成される。これはVFを用いて作成されたスケールであるが、嚥下内視鏡検査(VE)にも応用可能である。



Ⅲ.どのような病態の結果、誤嚥・喉頭侵入するか


 麻痺や舌圧低下により舌運動低下が起こり、食塊移送の障害、舌骨・咽頭挙上および咽頭腔短縮の障害により喉頭閉領不全と食塊の咽頭残留、気道防御能力の障害が誤嚥・喉頭侵入の病態として考えられる。これらの病態を誤嚥・喉頭侵入が生じるタイミングと合わせて考える。



Ⅳ.所見をどのように解釈して対策を決定するか


 VFで観察できる嚥下のメカニズムは、舌骨・喉頭挙上、舌根部の後退、咽頭腔の短縮と咽頭収縮、頭頸部の位置を挙げ、これらを機能から食塊移送、咽頭腔の短縮、気動防御、頭頸部の位置の4つのモジュールに分類し考える。


ここでは単なる誤嚥の有無の確認ではなく機能解剖学の観点からVF所見を理解し、治療プログラムを立てることで、低下している機能の代償手段をVF検査から直接訓練へ繋げる。また機能の代償だけでなく、改善のための間接訓練も立案していく。



【勉強となった点】


 誤嚥の定義から、その機序を嚥下前、中、後期に分けてどのように評価するか、評価されたものがどのような病態より引き起こされるか、そのための治療介入の決定までをVF像より詳細に説明されていた。


 本稿では文章のみではなくVF所見から各器官の位置関係が照らし合わせやすくなっている。また誤嚥・喉頭侵入を増えぐために、姿勢調整、食形態調整、嚥下手技を一覧にしており、間接的に予防に関わる専門職も活用できると考える。



【最後に一言】


 老化や機能低下によって高齢者と誤嚥は密接に関わり、廃用を引き起こす要因の一つである。身体機能のみではなく認知機能の低下、「食を楽しむ」というQOLの低下にも影響を及ぼす。


 少ない楽しみのひとつである食事という点においても専門職として目を背けれない項目であり、この分野の益々の発展のためにもぜひ読んで頂きたい。



執筆:本多竜也


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