運動障害・歩行障害に対するリハビリテーション治療の進歩と実践

(220605配信)

運動障害・歩行障害に対するリハビリテーション治療の進歩と実践

中谷知生

総合リハビリテーション Vol.50 No.3 2022.3 pp243-249


Key word:脳卒中、ガイドライン、運動障害、歩行障害



★今回の記事はこんな方にオススメ!

・脳血管疾患患者に関わるすべてのセラピスト



今回は脳卒中治療ガイドライン改訂に伴い、「運動障害」、「歩行障害」に焦点を当てた記事を紹介します。

この2つは、セラピストの多くが敏感に反応するワードではないでしょうか。これらについて、ガイドラインでどのように追加・変更されているのか見ていきましょう。



【はじめに】


今回の脳卒中治療ガイドライン2021はGRADEシステムを基に作成されています。これはエビデンスレベルだけでなく利益・不利益のバランスや価値観や好み、コストなどを考慮したうえで“推奨度”を判定するという特徴があります。


そのため、日常の診療でエビデンスがしっかりしている訳ではないが、実施することが推奨される場面も出てくる可能性があります。


早速、運動障害と歩行障害について見ていきましょう。




【運動障害】


2015版では「運動障害・ADLに対するリハビリテーション」という1つの括りでしたが、2021版から「運動障害」と「日常生活動作(ADL)障害」に分けられています。



主な変更点は

・課題に特化した訓練の推奨度がAになった

・集団でのサーキットトレーニングや有酸素運動を行うように推奨されている

ことが挙げられています。



【歩行障害】


歩行障害についても、2015版[追補2019]では「歩行障害に対するリハビリテーション」と記載されていたものが、2021版では「歩行障害(1)歩行訓練」、「歩行障害(2)装具療法

」に分割されました。


内容としては、頻回な歩行やバイオフィードバック、トレッドミル、歩行補助ロボットなどであり変化はありませんが、2021版ではトレッドミル訓練が推奨度Aに変更されています。


装具療法については2015版では短下肢装具についてのみの記載でしたが、2021版では長下肢装具について以下の推奨文が追加されています。


・脳卒中後片麻痺で膝伸展筋筋力もしくは股関節周囲筋筋力が十分でない患者に対して、歩行機能を訓練するために長下肢装具を使用することは妥当である(推奨度B)

ただし、引用されている文献の対象が‘下肢装具なしで自力歩行可能な片麻痺患者で、日常的にカーボン製長下肢装具を使用している者’を対象としており、我々が普段行う状況と異なった状況であることは頭の片隅に入れておきたいですね。



【Impressions】


6年ぶりのガイドライン改訂となり、やはり様々な新しい知見が出ています。更には運動障害や歩行障害のカテゴリーが分けられるまでに至ったということは、それだけリハビリテーションに関わる分野での研究が進んできている証拠であると思います。我々もリハビリテーション、医療の発展に繋がるエビデンス構築の一助を担いたいですね。


今回触れた内容は主題である「運動障害」と「歩行障害」のみでしたが、この記事には他にも予後予測や短下肢装具の作成時期などについても触れられています。是非1度目を通して知識のアップデートに繋げていただければ幸いです。



●明日からできること!


・当該記事をもう1度熟読する

・自身が関わりそうな項目から確認してみる


文責:テツ@永遠の若手理学療法士






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