リハビリテーション医療の立場から 

(221106配信)

オーバービュー:リハビリテーション医療の立場から

花山耕三

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION

第31巻・第2号(通巻365号)・2022年2月号 P110-113


Key Words:筋ジストロフィー、リハビリテーション、機能障害、ADL、QOL



【アブストラクト】


Ⅰ.筋ジストロフィーとは


 筋ジストロフィーは遺伝性ミオパチーであり、進行性の筋萎縮、筋力低下をきたす疾患の総称である。病理的には筋鞘の蛋白欠損の発症要因があるものが多い。


 病型により欠損する蛋白が異なり、臨床病型、遺伝形式、原因遺伝子、欠損蛋白が結び付けられる。臨床症状は筋力低下が主であるが、心筋や平滑筋の障害、疾患による異なるが、中枢神経系、内分泌系、眼症状、難聴等を併せもつことも少なくないのが特徴である。


 1815年より長期間治療法の確立されていなかったが、呼吸不全に対する非侵襲的陽圧換気療法、心不全に対する薬物治療の進歩等により根治までは至らずとも、生命維持、生存期間の延長が進んでいる。



Ⅱ. 筋ジストロフィーのリハビリテーション医療の基本的な考え方


 進行性疾患のため長期的に心身機能低下は必ず進んでいき、それによる活動、参加に影響を受ける。そのため心身機能低下を最小限に留め、活動維持による参加の促しが筋ジストロフィーのリハビリテーションにおける基本的考え方となる。


 様々な病型には、遺伝性、進行性という共通点がある。それに反し、筋力低下分布や進行速度は病型により異なり、同じ病型でも違いがある。


 長期的に見ていくと筋力低下は免れないため、関節可動域の予防が重要である。徒手的な可動域訓練、持続伸長、装具療法、脊柱変形の予防・改善のための手術療法が必要により選択される。


 心身機能の維持による活動維持が必要であり、PT、OT、STにはセルフケア、移動能力、摂食・嚥下機能の維持・改善が求められる。近年では参加促進のためにデジタル機器や環境の進歩により移動能力低下を補う手段として確立されており、QOL維持・向上につながり患者自身の人生の選択肢の多様化が期待されている。



Ⅲ. 筋ジストロフィーのリハビリテーション医療の課題


 診断、内科的治療、外科的治療、リハビリテーション医療が進歩しているが、筋ジストロフィーは希少疾患であり、専門医療へのアクセスの制限等が課題としてあげられる。またケアの現場は施設から在宅へ移行しており、医療従事者や介護者のノウハウが蓄積されにくい状況という課題もある。


 医療やケアの進歩による小児期発症患者の長期生存が可能となり、小児科から成人診療科への移行期医療が議論され、小児期より予後を考え、生活の自立や社会参加促進することが重要である。そのためにはライフステージの経過に疾患進行の治療が進歩していく必要がある。


 近年の疾患診断技術の進歩が正確な早期診断を確立させている。筋ジストロフィーのリハビリテーション医療において、疾患進行を予測し、内科・外科的治療による副作用や合併症の注意が必要である。指定難病であり、障害が重症化すると家族・介護者の負担が大きく得るため、状況に合わせた社会資源の活用も検討していく必要がある。



【勉強となった点】


 筋ジストロフィーは主として進行性の筋萎縮、筋力低下が臨床的にもADL、QOLの低下を招くため、医療の進歩に伴う早期診断が重要である。小児期より専門的な予後予測のもと、活動参加を促進していくこと本人の QOLに深く関与し、それには我々療法士の介入が重要であり、家族・介護者の負担軽減を含めたサポートも重要であることが本稿を通じてわかった。 



【最後に一言】


 本稿ではディシェンヌ型筋ジストロフィー患児の起立訓練や座位保持装置付き車椅子の写真の掲載もされて、治療進歩に伴い、摂食嚥下障害が顕著化されていることにも触れられており、筋ジストロフィー患者の多様化へのアプローチのためにも一度は目を通して頂きたい。



執筆:本多竜也


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