慢性閉塞性肺疾患
田中貴子
総合リハビリテーション Vol.49 No.11 2021.11 pp1039-1044
Key word:運動療法、セルフマネジメント教育、身体活動、行動変容、包括的ケア
★今回の記事はこんな方にオススメ!
・呼吸器疾患患者にかかわる機会が増えつつある方
・COPDに対する呼吸リハの考え方を確認したい方
こんにちは!おいしい日本酒には目がない‘テツ’です!
皆さんは学生時代に呼吸器疾患に対する呼吸リハについてはどのような内容を学ばれたでしょうか?最近は超高齢化に伴い既往に呼吸器疾患を持つ患者も多くなってきているように思います。
今回は呼吸器疾患の中でも代表的な疾患であるCOPDについて、最近のリハビリテーションの考え方について触れていきたいと思います。
【COPDの病態】
最近の考え方に触れる前に、COPDの病態を確認していこうと思います。
COPDはタバコ煙などの有害物質により、末梢気道や肺胞に病変が生じ気流閉塞を来すような病態を示します。主な症状として呼吸困難や咳・痰・喘鳴などの呼吸器症状だけでなく、骨格筋の機能障害、運動耐容能低下などの全身症状も認められます。とりわけ、骨格筋機能障害については、骨格筋での酸素利用能低下に伴い乳酸アシドーシスが進み、その緩衝作用により軽労作でも過剰な換気応答となりやすい状態であることが知られています。
その他、労作時に呼吸苦が生じるようになると健康関連QOLも障害されやすくなります。
【COPDの呼吸リハ】
COPDに対する呼吸リハは非薬物療法として位置づけられており、強い科学的根拠によってその有効性が確立されています。
本邦での呼吸リハは2018年の改訂で新しい概念を示され、患者が増悪を繰り返すことなく、疾患を患者自身で管理しながら安定した状態で生活することを目標とされています。
【COPDの呼吸リハの構成要素】
構成要素は運動療法、ADLトレーニング、コンディショニングの3本柱+セルフマネジメント教育で構成されています。
ここではそれぞれについて簡単に触れていきましょう。
●運動療法
運動療法の目的は換気需要を軽減させることが主軸であり、強いエビデンスがあります。換気需要軽減については、骨格筋の酸素利用能の改善が乳酸アシドーシス軽減につながり、換気応答が是正される方向に傾きます。このことは、エアートラッピング軽減による肺過膨張抑制が呼吸困難感軽減につながるのです。
●ADLトレーニング
ADLにおける呼吸困難の軽減と動作遂行能力の向上、QOLの改善を目指すものとなる。COPD患者においては上肢動作や前かがみで呼吸困難が生じやすい動作の回避、酸素需要に見合った動作方法の指導、環境整備による運動負荷の緩和が効果的とされています。
●コンディショニング
コンディショニングは運動を効率的に行うための行為です。具体的には呼吸練習、ストレッチ、排痰法などが含まれます。
●セルフマネジメント教育
疾患の知識を得るだけでなく、医療者と協働しながら問題解決のスキルを高め健康維持・増進するための行動変容をもたらす支援のことを指しています。これを行うことにより、入院の減少や健康関連QOLの向上、疾患との付き合い方などの習得をすることが知られています。
【COPDの呼吸リハの新しい展開】
呼吸リハによって改善された身体機能の維持・向上を目指すことは重要であることはご存じの通りかと思います。その方法としては1日の歩数・活動時間などを活動日誌やスマートフォンなどでモニタリングし、それを基に個人の生活環境に合わせた工夫が求められるのです。そのためには我々医療者が患者と協働して目標を設定し、支援することも同時に必要となります。
【Impressions】
同じ呼吸器疾患に対する呼吸リハでも、COPDと以前紹介した間質性肺炎では大きくエビデンスや性質などが異なっていますね。
呼吸器疾患と一括りにせず、それぞれの特徴に合わせたかかわり方をすることで、より良い介入に繋がるように思います。今後もまだ新しい考え方や治療方針が出てくるかもしれないということを思うと、アンテナを常に張っておいて知識のアップデートのタイミングを逃さないようにしたいですね。
●明日からできること!
・呼吸リハビリテーションのエビデンスを確認する!
・呼吸器疾患別に関わり方を見直してみる!
文責:テツ@永遠の若手理学療法士