理学療法士の卒前卒後教育とキャリアパス

(230721配信)

理学療法士の卒前卒後教育とキャリアパス

内山靖

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第32巻・第6号(通巻383号)・2023年6月号

P527-531

Key  Words:理学療法士、キャリアパス、卒前卒後教育



【アブストラクト】


 理学療法士免許取得のためには国家試験受験が必要であり、養成校施設規定で定められた101単位からなる教育課程を履修する必要ある。しかし各科目での教育目標を示すモデル・コア・カリキュラムは定められていない。


 卒後教育に関しても公的機関による研究制度や認定制度は存在はなく、各関連学会やみんかんだんたいとうで認定されている資格を取得する理学療法士は少なくない。


 そんな中多くの理学療法士が病院、施設等で従事しており、運動器、神経、呼吸循環、小児、がん、泌尿器、婦人科の各領域で理学療法を行なっている。また少数であるがスペシャリストと呼ばれる一般企業で医療知識を応用し製品開発、市場拡大、営業等を行なっているものもいる。


 少なからず理学療法士が活躍する各領域では多職種によるチーム医療が必要であり、それについても養成校で教育を受けている。高度急性期から回復期にかけての病院内チーム医療や、地域包括ケアシステムにおける医療・介護、行政、民生委員、地元自治会等の連携・協調もチーム医療の一環であり、講義や演習を教育される。


 今後のキャリア形成においてはキャリアアップ、キャリアチェンジ、セカンドキャリアについてこの多様性社会に適した形で体系化していく必要がある。



【内容のポイント】


Ⅰ.卒前教育


 理学療法士国家試験の受験資格を得るためには、養成校で101単位からなる教育過程を履修する必要がある。これは大綱化された内容については全国統一して標準化されている。


 一方、各科目の教育目標・内容を実質的に示す公的機関によるモデル・コア・カリキュラムは統一されておらず、修業年限や教育内容を含めた教育の質の保証について課題が残る。



Ⅱ.卒後教育


 理学療法士における卒後教育では公的機関が認定している標準的な研修制度や認定制度はなく、公益社団法人日本理学療法士協会が生涯学習制度を実施し、登録理学療法士、認定理学療法士、専門理学療法士と自主的な学習支援を行なっている。そのほかは各関連学会や民間団体等で認定している資格を取得する。



Ⅲ.どのようなキャリア形成が可能か


 理学療法士免許を取得した学生の多くは、病院、施設等に従事し、運動器、神経、呼吸循環、小児、がん、泌尿器、婦人科、 耳鼻咽喉科等の多くの診療科対応できる理学療法士が活躍している。そのほかには教育機関や研究職、行政機関での総合・一般職として従事するものいる。またスペシャリストとして一般企業で医療知識を応用し、製品開発、市場拡大、営業等にも従事している。



Ⅳ.チーム医療についてどのような教育を受けているか


 養成校では高度急性期から回復期にかけた院内でのチーム医療に必要なコミュニケーション・多職種連携論、リーダーシップ論を学修する。また地域包括ケアシステムにおいて医療・介護の専門職に加えた行政、警察・消防、民生委員、地元自治会等との連携・協調についての講義、演習を行う。



Ⅴ.卒前卒後教育・キャリア形成の課題と展望


 2021年に世界理学療法連盟(WPT)より「卒前卒後を含めた理学療法教育の枠組み」が示され、現代の変わりゆく国民生活に合わせた医療の提供が必要とされる。それに伴い理学療法士の働き方は大きく変化し発展しなくてはならない。治療と予防を連続して捉え、発症・虚弱・重症化・再発予防に対する理学療法を展開し、活動・参加・個々人の役割の両立を支援していく必要がある。


 2040年の更なる理学療法需要に向けたマーケットの拡大、ブランド力の強化が望まれる。



【勉強となった点】


 私自身が養成校を卒業した際に比べても、年々カリキュラムは改変を繰り返しており、更なる専門性の強化と多職種連携、地域連携・共生が色濃く卒前から教育されており、まだまだ理学療法士としての専門性は病院・施設外でも必要とされており、外的環境にも目を向けていかなければならない。



【最後に一言】


 理学療法士の卒後の活躍は病院施設が未だ大多数を占めており、理学療法学生においても卒後のキャリア形成を考える上で一番イメージが強いのではないかと思います。もちろん生涯最前線である臨床で活躍する理学療法士がいても良いと思いますが、国民生活においても多様性が生まれており、各分野・領域で活躍できることで専門職としての生存、更なる専門性の向上が見込めるのではないでしょうか。



記事:本多竜也



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