リハビリテーション科外来からの支援
渡邉修
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第32巻・第12号(通巻389号)・2023年11月号 P1134-1141
Key Words:高次脳機能障害、外来診療、診断、リハビリテーション治療、チーム医療
生活期の高次脳機能障害者に対するリハビリテーション支援の一部である、外来支援について述べられている。外来診療の役割は高次脳機能障害を正しく診断し、患者・家族に説明を行う。
その後ニーズの確認を行うことで目的志向的にリハビリテーション治療を提案するからことである。これらも医療院同様にチーム医療を展開しており、リハビリテーション医はこのチームの司令塔としての舵取り役も担っている。
また地域資源を使用する際には、地域連携を行う機関があり、社会参加目的、就労を目的とする様々な機関があり、連携を図る。また、これらを利用するには知っておかなければならない法制度があり、障害者総合支援法および介護保険制度による社会資源の利用を行う。
しかし、このような社会参加を妨げる要因に、高次脳機能障害が深く関係することもある。それについての指導も必要であり、本稿でも触れられている。
Ⅰ.外来診療の役割
(1)診断および説明
初診では高次脳機能障害についての正確な診断が重要であり、臨床症状と画像所見、神経心理学的検査結果が一致して高次脳機能障害の診断が成立する。
正確な診断は、本人家族、支援者の理解を深め、今後の心構えと行動変容を促す目的がある。社会面では各種必要書類の作成や社会資源の利用、各種控除や障害者雇用等につながる。
(2)患者・家族のニーズの確認と目標設定
リハビリテーション治療においては高次脳機能の改善のみではなく、改善によって何を望みどんな生活を送るのかという目的志向型アプローチを行なっていく。
(3)リハビリテーション治療計画の立案
外来患者の多くは基本的ADLは自立しているが、手段的ADLの自立度が低下していることが多く、高次脳機能障害者が社会参加をするには第三者のサポートが必須となる。
各個人のニーズは様々であり、高次脳機能障害の内容も将来の目標に影響を及ぼす。
そのためには多職種が情報共有することで、身体面・心理面での支援体制の構築が求められる。
(4)法制度の理解と社会資源の活用
前項同様に社会資源の活用も重要であり不可欠である。医師は発症から6ヶ月が経過した時点で、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳取得のための診断書を記載する。
これにより手帳の申請ができ、各種等級に応じた医療費、所得税、住民税等の軽減や、就労支援機関の利用による就労が可能となる。
(5)医学的管理
高次脳機能障害者に合併しやすい高血圧や糖尿病、てんかん発作の管理は社会復帰を行う上で重要である。高次脳機能障害自体は基本的な悪化はない(悪性脳腫瘍は例外)が、脳卒中であれば再発の危険性が常にあることを頭に置いて生活指導を行わなければならない。
(6)患者への心理サポートと心理療法
脳疾患は急に訪れ、高次脳機能障害を招き、患者本人や家族は心理的にも疲弊した状態で外来診療に訪れる。双方の苦労に寄り添い、双方の関係性に注力するサポートが必要である。
場合によっては心理療法から行動変容を行ったり、認知行動療法を行うことで成功体験を積み重ね自己認識を深めることも必要である。
(7)易怒性への対応指導
高次脳機能障害の情動コントロール障害に易怒性が表れることがある。家族との関係性を壊し、社会性を低下させる要因となる。原因によっては薬物療法も考慮しなければならない。
(8)就労支援
一般就労が可能であるか判断する項目があり、これから一つの判断材料となる。また将来的な就労支援が可能と判断されれば、現就労先と休職期間、復職後の勤務形態等を確認し、職業能力評価および訓練の場として地域の就労支援機関と連携が必要である。
一方で、復職が不可能と予測されれば、福祉的就労を検討し、時間をかけて社会性および職業能力の向上を図る。
(9)復学支援
小児期にも急性脳症、頭部外傷、低酸素脳症等により高次脳機能障害を呈することがある。この場合は、親の許可を得て、文章にして学校に配布するかもこともある。また、普通学級か、特別支援学級かの選択も必要である。
(10)家族支援
高次脳機能障害を呈する患者家族の負担は肉体的なものよりも精神的負荷が多く、これが介護負担感を生み出し、これによりさらなる患者の感情コントロール障害につながる。
また介護者の鬱傾向も少なくない。介護負担感は患者の外出頻度が増すことや、就労形態が一般就労に近づくほどに軽減する。医療専門職の生涯にわたる心理サポートが求められる。
Ⅱ.外来診療の課題
日本での外来診療の課題について成人、小児に分けてあげる。
成人では
①回復期病院退院後でも「高次脳機能障害」の診断がされていない。
②社会性を阻害する症状への対応が難しい。
③生活訓練の場が少ない。
④障害年金診断書、自賠責診断書、労災認定診断書に関する細かな説明がないまま年数経過している。
小児では
①小児科医の間でも「高次脳機能障害」が浸透しておらず、正しい診断を受けれない。
②復学に対して予想される「高次脳機能障害」の説明がされていない。
③早期復学したために、ドロップアウトすることでの引きこもりやいじめが問題となる。
④幼少期の脳外傷、脳炎がありながら医療機関を受診せずに成長し苦労する。
⑤学校教員にも「高次脳機能障害」が浸透していない。
⑥高学年になるにつれ、障害が顕在化することの理解が乏しい。
【勉強となった点】
現在私自身が高次脳機能障害の治療に関わる機会があるが入院中の介入であり、「高次脳機能障害」の大まかな理解はできている専門職に囲まれている。
しかし専門職間でも理解には大小の理解の相違があり、患者・家族間となれば尚更である。発症早期から正しい診断のもと地域参加に向けた多職種の関わりが重要である。
【最後に一言】
専門職でも地域特性や社会資源の知識や理解も必要であり、認識の普及に向けた活動もさらに必要であることが課題であると思う。
本校では経済的制度の概略や社会制度サービス、就労支援施設について書かれており、社会参加の一助となる内容であると思います。これを読んでくださった医療関係者が1人でも多く、地域・社会に増えていくことを望んでいます。
記事:本多竜也