通いの場づくり ―日本老年学的評価研究機構(JAGES)の知見から
井手一茂,渡邉良太,近藤克則
総合リハビリテーション Vol.49 No.12 2021.12 pp1163-1168
Key word:通いの場、介護予防,新型コロナウイルス,健康二次被害,JAGES
今回の記事はこんな方にオススメ!
・通いの場に関わる知見に興味のある方
・これから通いの場に関わる機会のある方
こんにちは!花粉症に抗う‘テツ’です!
今回は介護予防つながりで、通いの場の記事を紹介します。
通いの場という名前を知っている方は多いかと思いますが、その効果や具体的な取り組みについて知っている方は少ないのでしょうか。
JAGESでは、通場について以下のように考えが示されています。
〇狭義:介護予防に資する住民運営の通いの場(体操や趣味活動、茶話会など)
〇広義:行政が財政的支援を行っているものに限らない取り組み(スポーツ、有償ボランティアなど)
それぞれ、エビデンスとして示されているものを列挙していきます。
[環境因子]
・通いの場が家から近いほど参加している
・広義の通いの場(スポーツなど)では、健康指標が良好な高所得者や高学歴者の参加が多い
・狭義の通いの場は低所得・低学歴者の参加割合が高い地域が3~6割存在している
[行動の変化]
・通いの場に参加することにより、歩行・外出・会話の機会が増えた
・健康に関する情報授受の場となり、健康に関する意識が高まる
[アウトカム]
・通いの場などが多く設置されている地域では、フレイル状態の高齢者が少ない
・通いの場の参加で高齢者のうつ発症リスクが低い
・要支援・要介護リスクが低下する
[長期効果]
・要介護認定・認知症発症リスクが低下する
ここではJAGESが取り組んできた例を紹介します。
愛知県で取り組まれてきた例では、高齢者が歩いて参加しやすいよう、多くの通いの場を整備しています。その運営は住民ボランティアが主体となって行い、それを行政が支援する形となっています。この住民ボランティアについては、“社会参加している高齢者ほど要介護状態になりにくい”という知見を紹介することで増やすことが出来たようです。
この取り組みは2007年から開始し2014年には地域高齢者人口の約1割が参加するようになった結果、参加者で要介護認定リスクが半減し、認知症発症リスクが3割抑制されるという結果も認めています。
今回紹介した取り組みは一例であるため、各地域で様々な取り組みがされているかと思います。今後、介護予防や健康寿命の延伸を図るためにも、地域での社会活動がより一層重要となってきます。10年後、20年後のことを考えると高齢者のみでなく、50~60代の働く世代への働き掛けも必要になってくるかもしれません。
明日からできること!
・地元で行われている通いの場について情報収集を行う
・地域の高齢者に通いの場を紹介してみる
記事:テツ@永遠の若手理学療法士