慢性疼痛の理学療法評価
肥田朋子
理学療法37巻5号2020年5月P412-421
自覚症状を問う疼痛評価だけでなく,心理的要因,身体的要因,社会的要因に慢性疼痛の原因を分けて,疼痛の評価を提案している内容である.
慢性疼痛の負のスパイラル
損傷→痛みの体験
→恐怖から悲観的な解釈と防御行動による破局的思考
→防御的・予防的な行動や不活動→身体活動低下・気分低下
→機能障害,ADL制限,抑うつ
この悪循環に陥らない様に,慢性疼痛には負のスパイラルが存在する事の理解は重要である.
近年の報告では
高齢者や認知症患者で表現認知能力が低下し,認知症の重症度により疼痛の感受性に影響を与える事がわかってきている.
疼痛の評価として実際の評価用紙も表として紹介しながら,各要因に分けて評価方法を提案している本文献は,まさに慢性疼痛に対する道標になる内容である.是非一読をお勧めしたい.
疼痛の適正理解からセラピストとして運動療法に加えて,情動や認知面という側面に目を向け,社会的な側面からも疼痛が生じる事こそ,慢性疼痛の関わり方の難しさであり面白い分野であると思う.
・疼痛の分類
生物学的要因の評価
疼痛の強度,疼痛感受性,疼痛の質,身体イメージなど複合的な状態の評価
心理的要因の評価
破局的思考の評価,恐怖回避思考の評価,不安や抑うつの評価
身体的側面の評価
疼痛生活障害評価尺度,運動能力,ADL障害など疾患特異的な評価
社会的側面の評価
健康観,生活の質
:理学療法士や作業療法士は,疼痛を身体的側面から評価の目を向けてしまう傾向にあると思う.多角的な評価でどこの側面に疼痛の要因が隠されているのか?また複合的な疼痛が混在しているのかのヒントは評価結果から推論を高める必要があると思う.
肥田氏も今後の課題で「多目的な評価を実施するには患者の協力が必要」と書かれている.特に心理的な要因や社会的な要因を評価する事で,患者自身も内面を見る行為に繋がるため,セラピストと患者の関係性を築く事は言うまでもなく必須事項だと思う.
記事:ひわ