複合性局所疼痛症候群とリハビリテーション「ハイブリッド型運動療法」
森岡周
総合リハビリテーション Vol.49 No.10 2021.10 pp951-958
Key word:複合性局所性疼痛症候群、病態メカニズム、EIH、ハイブリッド型運動療法
・CRPS治療に対する運動療法について知識を得たい方
・CRPSの病態を再確認し、治療に繋げたい方
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こんにちは!何にでも貪欲な‘テツ’です!
今回はCRPSに対するリハビリテーションに関する内容として運動療法にフォーカスを当てた記事を紹介します。
まず、CRPSの治療については理学療法や作業療法がファーストラインと考えられています。
一方で、CRPSにおいては患側空間への気づきの低下や身体イメージ障害が疼痛と関係していることから、単純な運動療法のみでは効果が得られにくいとされています。
では、我々セラピストがCRPS患者に対してどのような介入ができるのか、病態から読み解いていきましょう。
CRPSでは痛み、ROM制限、筋力低下、協調運動障害、知覚異常などの多彩な症状を示すことが知られています。
その要因として、組織障害・神経損傷などをきっかけに炎症プロセスが中枢神経系(下行性疼痛抑制系や運動関連領域)を機能不全に陥らせるというモデルや、ギプスなどによる不活動が知覚異常や身体イメージ障害を出現させ疼痛を感じさせるというモデルなどが考えられています。
もう1つ、CRPS患者ではしばしば「動かすと痛いのではないか」という運動恐怖があり患肢の使用が減少する“不使用の学習”があることも知っておきたい特徴的な病態です。
CRPSにおいては、下行性疼痛抑制系の機能不全から認知の歪みを生じることから運動療法と認知行動療法など心理的介入を合わせて介入が効果的と考えられています。
近年では、運動自体が疼痛緩和に寄与するというexercise-induced hypoalgesia(EIH)が知られています。これは疼痛閾値の上昇や痛覚強度の減少を特徴としていて、動かした部分以外にもその効果が認められています。
EIHのメカニズムは運動が下行性疼痛抑制系およびドーパミン作動系(脳報酬系)を賦活させ、鎮痛効果を起こすと考えられています。加えて、慢性疼痛患者ではドーパミン作動系に機能不全が起きていることも知られています。
このことから、ただ単に運動を処方するのでなく、到達目標を達成可能なレベルで設定し、そのレベルを徐々に引き上げるといった形で疼痛緩和に繋がることが考えられます。
運動恐怖がある患者では、疼痛を増強させないために「痛みがあるときは運動しない」という考えが有効であると誤って解釈している傾向にあるようです。これが長期間の不活動になってしまう要因でもあります。
このような状況では患者教育が重要であり、「慢性疼痛は組織損傷のサインでないため、動いて大丈夫」、「不活動が痛みを増強させる」といった根拠を示して情報提供する必要があります。
運動療法においても患者教育を行ったうえで行うことで症状が改善されやすいことも明らかにされています。
本文中には運動や活動が疼痛緩和をするための有益な手段であることが繰り返し記載されていました。それに加え、単純な運動療法でなく運動療法+αでの内容が多く書かれていることから病態理解をした上での介入の必要性が分かるかと思います。CRPSは複雑なメカニズムにより多彩な症状を呈すため、より求められる部分のように感じました。
運動療法を行う以前に、患者教育を行うためになぜ運動恐怖に至ったのか、患者がどのように考えているのかを聴取するためには信頼関係が必要であり、関係性を構築するコミュニケーションスキルも必然的に求められる能力になりそうですね。
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・病態理解のために知識を増やす
・多彩な症状を呈する疾患には、個別の評価とそれに応じた治療プランの選択が重要
記事:テツ@永遠の若手理学療法士