嚥下機能に着目した理学療法 嚥下関連運動機能
吉田 剛
理学療法ジャーナルVol.57 No.2
2023.2 p156-163
・理学療法士は姿勢や呼吸機能、頸部、体幹機能などから嚥下運動阻害因子に対応できる。
・嚥下運動を行いやすくするために、頸部、体幹機能を高め、座位保持能力の改善が重要。
・全身機能への働きかけをしたのち、嚥下関連運動機能への移行がアプローチの原則。
頸部症状がある整形外科疾患においても嚥下困難感や誤嚥性肺炎を発症するリスクがある。また、脳卒中患者の多くが発症初期に嚥下障害を有するとも言われる。理学療法士として関わることも多く、姿勢や呼吸機能、頸部、体幹機能など、理学療法士が嚥下機能に対応できる分野もある。
本稿では、頸部、体幹機能について、嚥下に関わる嚥下筋の解剖学、運動学から、嚥下関連運動機能へのアプローチ方法を解説、紹介している。
アプローチの原則は全身機能への働きかけをしたのち、嚥下関連運動機能へのアプローチを実施と述べられている。本稿では、頸部可動域の改善から肩甲骨や舌骨など周囲のアライメント修正、嚥下筋の促通といった直接的なアプローチ、そして、嚥下機能を行いやすくするための頸部、体幹機能の促通、座位保持能力の改善に向けたアプローチ方法、ポイントを図(写真)とともに解説している。
また、嚥下筋の促通を図る、顎引き抵抗運動という筆者が考案したアプローチも紹介している。
本稿では、嚥下筋の解剖学、運動学から解説しているが、頸部周囲の筋は小さく触察などでも分かりにくい印象である。また、触察など触れられることで不快感を持たれる対象者も多いと感じる部位であるため、アプローチを実践していく上でも、解剖運動学の知識、触察の技術が重要であると考える。
本稿では、嚥下関連運動機能に対するアプローチ方法をいくつか紹介している。頸部や体幹機能に加え、姿勢や身体機能など対象者の全身状態を広く評価し捉えることで、嚥下機能に限ったことではないが、嚥下機能への介入やアプローチの質の向上、摂食嚥下チームでの役割の確立などに繋がっていくのではないだろうか。
記事:ながちゃん