人工股関節置換術術後難治例に対する理学療法の関わり
池田光佑 田中友也 三井博正 鈴本和隆
Journal of Physical Therapy Vol.39 No.1 2022.1 P 12-20
THAに関する知識の整理
1)股OAの原因
2)DDHの分類
3)高位脱臼股と一次股OAとの比較
4)THAの構成
5)高位脱臼股にTHAを行う際の術式の特徴
THA術後の理学療法の展開
1)疼痛管理
2)ROM練習
3)筋力トレーニング
4)脚長差に対する対応
5)立位アライメントの修正
6)歩行練習
7)靴下着脱動作
8)隣接関節への影響
股OAに対し、THAは除痛、生活の質や歩行の向上に有効とされている。近年では入院期間が2〜3週間と短縮している。しかし、DDHに起因する高位脱臼性股関節症が原疾患の場合、回復に時間を有し退院延長することもある。高位脱臼に対するTHA後の理学療法や関わりについて記載されている文献です。
股OAの原因はDDHなどに起因する二次性のものが大半を占めている。DDHの分類はCrowe分類が簡易でよく用いられる。高位脱臼股では一次OAと比較し、上方変異し臼蓋を形成するため、脚長差や股関節周囲筋は短縮位を呈しやすい。
THAは臼蓋カップ、ライナー、ヘッド、大腿ステムの4つから構成。高位脱臼股での術式は骨移植や癒着剥離を行いやすい後方進入が多い。後方進入で後方組織を縫合しない場合は脱臼リスクが高まり、皮切が20㎝近くでは術後疼痛に関わる。脚延長を行うため短縮した股関節周囲筋を切離する事がり、疼痛管理が必要である。また、筋の長期の不動による繊維化を認める事が多い。
術後疼痛管理の主な箇所は、術創部、切離した筋および脚長差に伴い伸長された筋である。寒冷療法、ポジショニングによる除痛を行う。ROM練習はホールドリラックス実施後にストレッチを用いると効果が得られやすい。高位脱臼股は術前に大腿骨頭が上方偏移を来し臀筋の短縮による筋力低下が生じる。
術前、術後早期からでん臀筋の筋力トレーニングが必要である。1.5以下の脚長差ではインソールを挿入し対応する。1.5以上では補高靴で対応する。THA後に難渋する動作が靴下着脱である。開排位で靴下着脱動作では股関節屈曲ROM 92.5°必要となる。90°に満たない場合は補助具の検討が必要。隣接関節の影響では膝痛や腰痛をきたすため、大腿筋膜張筋や腰方形筋の柔軟性改善が必要である。
THA後の理学療法を行う上で、術式と切離された短縮筋については押さえておきたいポイントだと思いました。DrのOP記録や聴取する事で情報収集できると思います。
高位脱臼股に対するTHA術後について、理学療法を考えるために必要な情報、理学療法を行う上でのポイントが内容が読みやすく記載されている文献です。是非読んでみてください。
記事:琢麻