呼吸リハビリテーションの展開

(220218配信)

急性期リハビリテーションと栄養管理

小林龍生

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第31巻・第1号(通巻364号)・2022年1月号 P19-27

Key Words:リハビリテーション、栄養管理、急性期、 サルコペニア、生体電気インピーダンス法



【内容要約】


 急性期病院では外来診療、症状悪化による手術適応患者の入院診療を行い、救急患者、重度難治症例等も少なくない。状態に合わせた栄養状態の管理がその後の予後改善に大きく寄与される。


 本稿では急性期リハビリテーションに合わせた栄養評価を行い、評価より サルコペニアとの関連性、それに伴う栄養管理の介入が述べられており、最後に今後の急性期栄養管理で活用が期待される評価法について述べられている。



【アブストラクト】


Ⅰ.急性期リハビリテーションの栄養評価


 栄養評価には主観的包括的栄養評価(Subjective Global Assessment;SGA)を用いて、体重の変化、食事摂取状況、消化器症状、身体機能、栄養に影響する疾患、皮下脂肪や筋萎縮、浮腫、腹水の程度より栄養障害があるか主観的に評価する。高齢者用には簡易栄養状態評価(MNA®︎–SF)が用いられ、体重変化、食事摂取状況、歩行能力、精神的か急性疾患によるストレス、精神神経的問題、BMIか下腿周囲長をスコア化し評価する。


 また血液検査ではアルブミン濃度が栄養状態経過の指標とされる。アルブミンの半減期が20日であり、毎週での経過が現れにくく、保険診療上でも毎週の検査は難しいため、栄養方法変更時に行うことが望ましい。


 消化器疾患の術後予後予測の指標であったが栄養評価にも用いられる小野寺のprognostic nutritional index(PNI)=10×(アルブミン値)+0.05×(リンパ球数)で求められ、40未満では予後不良とされる。



Ⅱ. 急性期リハビリテーションの栄養管理とサルコペニアの関連


 急性病院の入院患者には高齢者が多く、一次性の サルコペニアが多く、併存疾患、それに伴う活動性低下、栄養摂取不良による二次性 サルコペニアのリスクも少なくない。


 サルコペニアの診断には二重エネルギーX線吸収測定法(dual energy X-ray absorptiometry;DXA)または、生体電気インピーダンス法(ビオelectorial impedance analysis;BIA)による筋肉量評価が必要である。だが元々体力的にも測定困難な症例も多く、筆者らはBIAによるSkeletal Muscle Index(SMI)と下腿周囲長が急性期でも簡易評価できるツールと考えている。



Ⅲ. 急性期リハビリテーションの栄養管理の実際


 2005年に発表されたEnhanced recovery after surgery(ERAS)より手術直前まで経口摂取が行われ、術後早期より経管栄養や経口摂取が開始されている。


 静脈経腸栄養学会の方針からも「腸管が機能していればできるだけ腸管を使用する」と提言されており、これは腸粘膜の未使用が長期化することで萎縮が高度化し、腸壁へ腸内細菌が侵入するbacterial translocationが生じ、感染症が増加するため、術後24〜48時間までに経腸栄養の開始が推奨される。ICUでは全身状態不良により経口摂取困難な状態となり中心静脈栄養が行なわれることが多いが、同様に腸粘膜萎縮をたどり、状態悪化となれば敗血症のリスクとなる。そのため経管栄養の早期開始が必要である。



Ⅳ. 急性期リハビリテーションの栄養管理のトピック


 近年では悪液質にアナモレリン塩酸塩錠(エドルミズ錠®︎)が承認された(2021年1月)。グレリン(消化管ホルモン)は食欲増進作用があり、アナモレリン塩酸塩もグレリンと同じ腐った視床下部の成長ホルモン放出促進因子受容体タイプⅠa作用し成長ホルモンを放出することで食欲増進し、筋肉量増加させる作用がある。現時点ではがんの悪液質のみ適応であり、心合併症の副作用に注意が必要であるが、食欲低下し栄養管理困難な悪液質には有効な新薬と期待されている。


 また前述したBIAは筋肉量、脂肪量に合わせてphase angleが示される。これは両手、両足のセンサー間の体を複数の波長の電流が筋肉量と脂肪量を算出するが、体内に電流が流れる際に細胞膜がコンデンサーとなり、電流と電圧に生じる位相差のことである。健康体ではphase angleは大きく、加齢、病弱となり細胞では小さくなり、栄養指標として報告される。 



【勉強となった点】


 急性期入院患者にはサルコペニアが深く関係し、早期のベッドサイド介入より筋量評価が必要である。治療並行した段階では患者への評価に生じる負担も考慮し、下腿周囲長が簡易評価として有効となる。これが大きいことが退院帰結を良好とし、 栄養管理と運動療法によるサルコペニアの改善が重要である。


しかし、急性期では入院期間が平均2週間以下と短く、患者の病状も加味すると積極的な運動療法の実施は困難な場合も考えられ、退院・転院後の栄養管理・運動療法の継続が必要である。



【最後に一言】


 急性期リハビリテーションで主治医より処方があった際には積極的な運動療法を実施するための栄養管理が行われているか、栄養接種の様式を確認し、経管栄養であれば、経口摂取が可能となる症例ではないかと検討を行う必要がある。


そのためにはNutrition Support Team(NST)という入院患者に最良の栄養療法を提供する多職種連携チーム等の活動も必要ではないでしょうか。その一端を我々療法士が担うためにリハビリテーション栄養という分野の研鑽が必要ではないかと考える。



執筆:本多竜也

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