人工肩関節置換術術後難治例に対する理学療法の関わり

(220612配信)

人工肩関節置換術術後難治例に対する理学療法の関わり

中川泰誉 平本剛史 北坂彰宏 田中正宏 菊川和彦

Journal of Physical Therapy Vol.39 No.1 2022.1 P 38-45


【アブストラクト】


RSA術前の理学療法評価

術後理学療法

術後合併症および注意点

術後成績

RSA術後の肩甲上腕リズム

術後アプローチ



【構成】


 肩人工関節置換術は上腕近位端骨折、関節リュウマチや変形性関節症へ適応が広まっている。しかし、腱板断裂を原因とした二次的な変形性方関節症に対しては除痛は得られるが、機能回復に制限的である。そこでリバース型人工肩関節置換術(RSA)考案され、機能回復が得られる事が報告された。RSAの特徴および術後の理学療法の進め方、難治症例へのアプローチが記載されている構成となっている。



【内容】


 RASは失った腱板機能を三角筋で代償する事で挙上を可能とする。解剖的人工肩関節とは違い、回旋動作に制限が残る。


 RSA術前評価として、三角筋の機能評価を実施する。他動的に肩挙上位を誘導し保持できるかを確認する。術後は、上肢延長に伴う三角筋の伸張ストレスによる疼痛を緩和するため外転装具を装着する。


 術後合併症は、血腫、感染、神経損傷、脱臼、肩峰・肩甲棘骨折、肩甲骨関節窩部ノッチングがある。発症率は6.2〜9.1%である。早期リハビリでは無理な可動域拡大により、合併症の発生リスクを高めるため、三角筋への過度なストレスをかけるような運動は実施すべきでない。股脱臼リスクとして、強制的な結滞動作のストレッチは実施せず愛護的に行う。


 RSA後の肩甲上腕リズムは、外転30°以降から1.3:1と肩甲帯の運動動態が異なると報告がある。RSA術後は肩甲帯の可動性が重要となり、早期から介入が必要である。装具により、肩甲帯の過度な外転・前傾位となりやすく、術後すぐ姿勢指導などの介入が重要となる。


 術後のアプローチとしては、三角筋の機能改善と肩甲帯の可動性改善である。①肩甲帯挙上を動作を抑制し肩甲上腕関節の運動を促すこと②肩関節挙上後での肩甲帯上方回旋・内転・後傾を促すこと③日常生活動作の獲得のため肩関節挙上位での肩関節外旋・肩甲帯内転の促通を図ることである。



【面白かった点と感想】


 RSA術後は解剖学的人工関節と異なるため、三角筋の機能と肩甲上腕リズムをしっかりと理解しておく必要があると思いました。理学療法を行う上でのリスクをしっかりと回避するために、合併症もしっかり理解しておくポイントだと思います。



【結語】


 RSA術後について、理学療法を考えるために必要な情報、理学療法を行う上でのポイントが内容が読みやすく記載されている文献です。是非読んでみてください。

 


記事:琢麻


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