股関節疾患患者の理学療法における代償動作の捉え方

(230609配信)

股関節疾患患者の理学療法における代償動作の捉え方

中野渡達哉 

Journal of Physical Therapy Vol.39 No.8 2022.8P730-739



【アブストラクト】


股関節疾患の代償動作

代償動作の制御/活用方法

代償動作を捉える際の評価指標



【構成】


 変形性股関節症やTHA術後の患者では疼痛回避やエネルギーの効率化のために代償運動という戦略が用いられる。しかし間違った代償動作を選択することで転倒や再置換術のリスクを高めることになる。そのため、運動目標や二次的リスクの発生に着目することも重要である。


股関節疾患患者における代償運動の動作分析と運動目標の観点から代償動作メリットとデメリット、代償動作の抑制と活用の捉え方、判断基準に解説してある文献です。



【内容】


股関節疾患の関節拘縮や筋力低下に関連する代表的な代償運動(矢状面、前額面)がある。


①不十分な股関節伸展による体幹前傾に対する代償運動

②不十分な股関節伸展による体幹前方移動の制限に対する代償動作

③不十分な股関節屈曲による下肢の前方移動の制限に対する代償運動

④過度な股関節内転に対する代償運動

⑤過度な股関節が外転に対する代償運動

が挙げられる。


代償は「運動キャパシティの代償」「運動目標の代償」に分けられる。運動のキャパシティとは、神経筋骨格に由来する身体機能のことである。股関節疾患患者は運動キャパシティの水準が低下した状態である。筋骨格系の余力が少ない部分ほど課題実行時に代償動作が出現しやすい。


運動目標は、エネルギー消費の効率性、速度、安定性、疼痛回避などが含まれる。十分な運動キャパシティを持つ患者は運動目標に即した効率的な代償戦略が選択される。しかし水準が低い場合、代償戦略は限られ、特定の運動目標に重点が置かれてしまう。


 患者は運動キャパシティと課題の要求度との間の余力がなくなり代償運動が選択されるが、実際は余力が残っていても先行し代償運動が現れる場合がある。代償戦略が選択される過程で、運動キャパシティと運動目標だけでなく、心理的要因も含まれる。運動キャパシティ、運動目標、心理的要因を考慮し、代償動作を捉えることが重要である。


 文献中に股関節疾患の代償運動を捉える際の評価指標が表で記載されている。代償される運動の種類と評価指標(運動キャパシティ、運動目標、過用・廃用リスク、心理的要因)に分けられ表が記載されています。


 

【面白かった点と感想】


 股関節疾患の代表的な代償運動とそれについて動作分析されており、イメージが行いやすい内容でした。代償運動の抑制/活用では、運動キャパシティや運動目標など聞きなれない内容でしたが理解していくと臨床に役立つものだと思います。表も記載されており参考にしやすいです。



【結語】


 股関節疾患の代償運動について分かりやすく、明日からでも臨床で活用できる内容となっています。是非読んでみてください。



記事:琢麻


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