回復期リハビリテーション病棟における医師の役割
岡本隆嗣
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION
第31巻・第2号(通巻367号)・2022年4月号 P337-346
Key Words:回復期リハビリテーション病棟、リハビリテーション科医師
Ⅰ.はじめに
2022年4で回復期リハビリテーション病棟が制度化されて22年が経過している。22年もの間で日本の医療は
①入院医療の機能分化
②地域包括ケアシステムの医療、介護保険の両側面からシステム整備が進められている。
2013年には、人口10万人当たりの病床数が50床を超えており、病棟の「質」が求めらている。この「質」の向上にはチームリーダーとなるリハビリテーション専門医の存在が欠かせない。
Ⅱ.質向上に向けた回復期リハビリテーション病棟の医師の役割
回復期リハビリテーション病棟における「専門医」は2014年に入院料の体制強化加算に制度化された。しかしリハ医療への3年以上の経験を有し、計14時間程度のリハ医療の研修を修了していることが資格要件である。
また医師の業務や役割は医学的管理、リスク管理、機能障害やADL能力の回復予測、個別リハ処方、看護ケア指示、チーム運営、リーダーシップが挙げられる。
2017年に回リハ病棟協会が示す「あり方指針」では、医師の役割を
①入院判定への関与
②入院日に診療情報を基に診察
③多職種評価でADL動作に関連する心身機能、活動能力を評価
④参加、環境、個人因子を聴取し、生活自立度評価から入院診療計画の立案
⑤リスク対応の決定と指示出し
⑥ゴール設定と共有
⑦本人、家族への入院診療計画の説明と同意
⑧カンファレンスへの参加、進捗状況の確認、目標の見直し
⑨リハビリテーション総合実施計画書の作成と本人、家族への説明と同意
⑩退院に向けて障害特性による今後の予後予測
と説明が挙げられる。
Ⅲ.リハビリテーション科専門医配置の効果
多職種によるリハチーム医療の業務プロセス管理には医師のリーダーシップがチーム運営には重要である。チームの士気を高め、方向性を正し導くことがチーム医療の質の向上につながる。
Ⅲ.リハビリテーション科以外に必要な診療科
回リハ病棟に入院する患者は高齢化し合併症の重度化が顕著となる。それに伴い急性期医療のDPC導入や在院日数短縮により十分な精査が行われずに回リハ病棟への転院となることも少なくはない。そのために常勤の脳外科、脳神経内科、整形外科、リハ科の各専門医、内科がバランス良く必要である。
Ⅳ.医師1人あたりの適切な患者数
上記にも示すが医師の業務内容は多岐に渡り、1人で全てを行うには業務量が多くなってしまう。主治医であるか、他科診療科医師のコンサルテーション対応かで変動するが、入院料1.2で体制強化加算1.2を算定する専従医師1人あたりの平均は22±5名である。
普段セラピストが必ず関わる医師について取り上げられており、業務内容が多岐にわたる中で、病棟経験による専門性の向上がチームの質向上につながることが理解できる内容であった。
各科の専門医やリハ医とのコミュニケーションにより我々セラピストも専門性が必要とされるように研鑽が必要である。
リハビリテーションの現場ではリハ科医師がリーダーとなり、チームメンバーを牽引することがリーム医療の質の向上には必要不可欠である。リハ医が多くの現場で活躍するようになることが日本のリハビリテーション医療の進歩につながり、その他のチームメンバーである専門職の活躍に繋がってくる。
執筆:本多竜也