ストレッチングのエビデンス
市橋則明
理学療法学 第 41 巻第 8 号531~534頁(2014 年)
2014年に発表されてから、現在もストレッチングのエビデンスとして読まれている文献であり、運動療法を考えるセラピスト全ての方に目を通して欲しい内容である。
「はじめに」でも紹介されているが、ストレッチングは関節可動域の改善、筋緊張の低下、疲労回復、血流増加、傷害予防、スポーツパフォーマンスの向上などの効果が期待されている。しかし、これらの効果に関するエビデンスは十分とは言えない現状がある。
この文献では
・ストレッチングが筋力に与える影響
・パフォーマンスに与える影響
・傷害予防に与える影響
・遅発性筋肉痛に与える影響
の質問提示があり、詳しく説明する流れが非常にわかりやすく、特記したセンテンスも興味の惹かれる内容である。
・ストレッチングにより筋力は変化するのか?
ストレッチングの持続時間と筋力への影響
短時間(45秒以下)のストレッチング:筋力への影響はほとんどなし。
中時間(46秒~90秒)のストレッチング:筋力を5.6%程度低下させる可能性あり。
長時間(90秒以上)のストレッチング:筋力を6.1%程度低下させる可能性あり。
ストレッチングのタイミングと筋力への影響
運動前:筋力を低下させる可能性あり
運動後:筋力への影響は不明
ストレッチングと筋肥大
動物実験では、長時間のストレッチングが筋肥大を引き起こすことが示されている。
ヒトでの研究では、ストレッチングのみで筋肥大を引き起こすことができるかどうかは明らかではない。
・ストレッチングによりパフォーマンスは変化するのか?
スタティックストレッチングは、ジャンプ力を低下させる可能性あり。
(特に0秒以上の長時間のストレッチングは行わない)
ダイナミックストレッチングは、幅広い運動種目でパフォーマンスを向上させる効果あり。著された市橋先生は、ウォームアップとしては、ダイナミックストレッチングを推奨をしている。
また、傷害予防に与える影響におけるストレッチングは、ウォーミングアップとストレッチングに加え、筋力トレーニングやプライオメトリックス、固有感覚トレーニングを実施した場合に、パフォーマンスの向上、一定の傷害予防効果があるという説が有力と結論づけている。
メディアでは、ストレッチングに対し未確定な情報のまま発信されているケースは散見される。2014年の段階から今日に至るまで、ストレッチングの視点や理由が大きく変わったとは感じられない。しかし、効果については、現在知るべきところをしっかりと押さえることは非常に重要であり、読みやすい表現で研究結果の数字を知るためにも、一読をお勧めする。
記事:日和