変形性関節症・変形性脊椎症に対する包括的なアプローチ

(220717配信)

変形性関節症・変形性脊椎症に対する包括的なアプローチ

矢吹 省司

総合リハビリテーション Vol.50 No.5 2022.5 pp451-455


Key word:変形性関節症,変形性脊椎症,包括的アプローチ,運動療法,集学的治療



今回の記事はこんな方にオススメ!


・変形性関節症・変形性脊椎症に対する運動療法に興味のある方

・整形外科領域でのリハビリテーションに関わりのある方



今回は変形性関節症・変形性脊椎症についての記事を紹介します。セラピストであれば、この内容は興味のある方も多いのではないでしょうか。変形性関節症といえば、慢性痛の要因と知られています。今回は慢性痛に対する治療に関して、ガイドラインで記載されている内容を確認していきましょう。



【痛みについて】


●変形性関節症


関節軟骨の変性・破壊と関節周囲の軟骨下骨での骨の増殖性変化(骨棘など)があり、滑膜炎も生じます。それにより関節可動時、荷重時などで痛みが生じますが、安静時では痛みを感じることは少ないです。



●変形性脊椎症


椎間板や椎間関節の変性により、椎間板高の狭小化、椎体終板付近の骨棘形成、関節の変形などが見られます。関節の変形が生じる部位によって、頸部痛や腰部痛、肩こりなどを生じます。変形によって脊柱管が狭窄し脊髄や神経根が圧迫されると、それに伴った症状も見られます。



【ガイドラインから見る痛みの治療】


各種ガイドラインや文献によって部分的に異なりますが、痛みの治療に対しては、薬物療法をはじめ、運動療法や心理療法、装具療法、手術療法、集学的治療が挙げられています。ここでは運動療法、心理療法、集学的治療に触れていきます。



[運動療法]


“慢性疼痛診療ガイドライン”においては一般的な運動療法は「無治療と比べて高い鎮痛効果と機能障害の改善効果が認められた(推奨度Ⅰ、エビデンスB)」とありますが、QOLについて向上を認めないとの記載もあります。解説では患者教育や心理療法を合わせて行う運動療法(集学的運動療法という)が推奨されています。


“腰痛診療ガイドライン2019”では慢性腰痛に対する運動療法は有用(推奨度Ⅰ、エビデンスB)とされていますが、急性・亜急性の腰痛に対してエビデンスは不明となっています。


運動療法がなぜ疼痛を軽減させるのか、その機序についてはexercise-induced hypoalgesia(EIH)が考えられています。EIHを引き起こす機序としては諸説ある中でもエンドカンナビノイド・システムが有力視されています。



[心理療法]


心理面においては、痛みを悪く捉えてしまうと恐怖や不安を感じ機能障害などが生じ、それが痛みを更に増強させ慢性化するという考え方(疼痛-回避モデル)があります。そのため、心理療法が必要となることがあります。

心理行動的アプローチとして認知行動療法が主として選択されますが、単独での効果は認められておらず、その他の介入(薬物療法、運動療法など)と組み合わせて実施されることを提案されています。



[集学的治療]


前述した運動療法と心理療法については単独での効果は少ないですが、組み合わせることでより大きな効果を期待できます。


“慢性疼痛ガイドライン”では慢性疼痛全般での推奨度は2に留まっていますが、慢性腰痛に対しては1になっています。本邦で集学的治療を行っている施設の報告では、痛みの程度、破局的思考、不安・うつは治療により改善し、QOLや身体機能も向上するとされています。



【Impressions】


今回の記事では、慢性痛に対する治療は、単独での治療でなく、様々な治療を合わせて行うことが推奨されるということが分かりました。


慢性痛は高齢者が抱える疾患の1つでもあり、我々が接することの多い疾患でもあります。具体的にどんな運動が効果的であるのか、時間は?頻度は?強度は?気になることが非常に多い部分です。エビデンスの元となった論文を確認し、具体的な治療内容について知識を深めていきたいですね。



●明日からできること!


・ガイドラインに引用された論文を読む!



文責:テツ@永遠の若手理学療法士



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