人工関節置換術後疼痛 人工股関節
山崎 肇
理学療法ジャーナルVol.56 No.7
2022.7 p779-791
・人工股関節全置換術(total hip arthroplasty: THA)
・THA後の10%程度の患者に術後慢性疼痛がみられる。
・術後の慢性疼痛には術前の疼痛、術前後の姿勢、心理が影響する。
・心理面の影響も大きく、疼痛の慢性化を防ぐためにも理学療法士による疼痛教育が重要となる。
THAの概要から、はじめにTHA後に限らず疼痛の定義、分類から解説している。
次に、急性期、慢性期の疼痛の特徴から各時期に適した疼痛管理、アプローチを解説している。
また、可動域訓練や筋力トレーニングの図(写真)を多く用い、注意点と合わせて掲載しているためイメージ、臨床場面へ応用しやすいのではないかと思う。
〇急性期
疼痛
:手術侵襲による炎症、安静時、運動時に加え夜間時痛
深部静脈血栓症や創部の感染、脱臼、脚長差などの術後合併症に注意が必要。
運動療法
:過度な安静は避け、早期から運動療法を開始する。この時期の運動療法は、防御性収縮に対するリラクゼーション、本稿ではスリングを使用した可動域訓練を図と合わせて紹介している。
またベッド上においても脱臼予防や良肢位を保つためにポジショニングを行うが、その際に圧迫による腓骨神経麻痺などにも注意が必要であると考える。
〇慢性期
前述したように、術後の慢性疼痛には術前の疼痛、術前後の姿勢、心理が影響する。
術前の疼痛の範囲や安静時痛の強さが術後にも関係するという研究結果がある。術前のスクリーニングなど、術後の疼痛管理は術前から始まっている。
本稿では、急性期と慢性期に分け、疼痛の特徴、その時期に適した疼痛管理、運動療法を紹介している。また、図(写真)も多く掲載されており、アプローチのイメージがしやすいと感じる。
疼痛は器質的なものから非器質的なものまで様々な原因がある。炎症反応や姿勢の変化は比較的捉えやすい原因ではないかと思われる。
本稿では慢性期の疼痛において、術前後の心理面について述べている。「痛いから動かしたくない」「(リハビリは)痛くなくなってからでいい」などと患者から聞かれることも少なくないと思う。
痛みに対するマイナスな感情が慢性疼痛を持続、助長させるため、術前から術後のリハビリや疼痛管理についての指導が望まれる。
各期における疼痛について理解し、患者、対象者との術前からのコミュニケーションが重要と考える。
記事:ながちゃん