神経難病のリハビリテーション

(220520配信)

神経難病のリハビリテーション

早乙女 貴子

総合リハビリテーション Vol.50 No.2 2022.2 pp121-128


Key word:神経難病,リハビリテーション治療,治療可能な神経難病



★今回の記事はこんな方にオススメ!

・神経難病の患者と関わる可能性のある若手療法士・学生

・神経難病のリハビリテーションについて総論的知識を得たい方



こんにちは!4月からすでに日焼けをし始めているの‘テツ’です!

今回はタイトル通り、神経難病のリハビリテーションについての記事を紹介します。



内容は総論的な内容が主となるため、若手療法士の方や学生の方向けの内容になるかと思います。ただし、神経筋疾患をはじめとする神経難病患者は症例数が少ないため、経験する機会がなく年数が積みあがった方もいるのではないでしょうか。


今回は総論的な知識を再度確認するためにも一読していただけると幸いです。



【神経難病リハビリテーション医療の特徴】


難病とされる神経筋疾患は治療により症状の維持・改善ができる疾患や急激に進行する疾患もありますが、多くは緩徐進行性の不可逆的な経過をたどることが多いのです。


罹病機関が長いため、ADLやIADLが自立して行える時期から、介助を要するようになり終末期を迎えるまで、医療者は同じ患者に繰り返しその都度の介入を行っています。


病期が変われば介入内容も自ずと変化します。患者の身体機能、心理・社会面の変化について把握することは最適な治療に繋がります。


以下に、病期による違いや神経難病患者でしばしば見られる機能障害について紹介していきます。



【病期別の関わり方】


※パーキンソン病の病期を参考


●発症早期…ADLは自立しているがIADLのやりにくさを感じている段階


 困難に感じていることを聴取・評価し、患者・家族への情報提供(福祉機器、住環境調整、福祉サービスなど)を行う※個々の性格や社会的背景によりタイミングを考慮する必要あり

  

●診断後~進行期…ADLやIADLのやりにくさを感じ、社会生活への影響がみられる段階


 患者の意向を鑑みて、生活場面に考慮した療法を提供したり、さまざまな機能代償方法についての提案・導入したりすることがある。


●進行期~慢性期…ADLやIADLの大半に介助を要するようになる段階


 身体・社会活動を安全に営めることが目標となる。それまで行えていたことが行えなくなる場合もあるため、修正案の検討が必要となる。


●終末期…明確な定義はないが、治療により回復が期待できない段階


 呼吸不全や循環不全は生命予後にも関わるため、患者の状態により医師の指示を確認し治療介入可否の判断が必要となる。



【神経難病でみられ得る機能障害】


●歩行障害


歩行困難感や易転倒性によりQOLが低下しやすい。装具やロボットスーツなどを利用した歩行訓練はQOLを改善することが示されている。


●バランス障害


小脳失調などでは顕著に出現する。バランスに対する介入や、生活環境の調整でADLが改善する可能性がある。


●呼吸機能障害


呼吸筋の筋力低下や、咳嗽力低下による気道内分泌物の除去困難、その他様々な影響により呼吸機能障害を呈する。咳嗽力については、咳の最大流量(Cough Peak Flow:CPF)が270L/min以上であれば気道内分泌物の除去が可能と判断されるが、それを下回れば咳嗽介助が必要となる。


●摂食・嚥下障害、栄養障害


多くの神経難病でみられる。経口摂取が困難となり、体重減少・栄養障害が生じる。そのため可能な限り、摂食・嚥下機能を維持するためのリハビリテーション治療を検討する。

疾患ごとに、パーキンソン病ではすべての嚥下相が障害され、多系統萎縮症では口腔期障害が著しいなどの特徴がある。


●上肢機能障害


筋力低下、感覚障害によりADL、IADL動作の障害がみられる。治療介入に加え、代償手段としての自助具などの利用を提案する。


●コミュニケーション障害


球麻痺や構音障害が生じると発話明瞭度が低下したり、自身の声でのコミュニケ―ションをとったりするのが困難になる。その代償方法としてのコール・スイッチ、センサーの選定など、患者の意向を確認して早期から支援を行うことが望ましい。



【課題と展望】


現在、神経難病患者の希望を叶えるための医療・福祉サービスが充足しているとは言えません。また、介護保険×医療保険でのリハビリを並行して受けられないため、地域リハの課題解決に医療機関のスタッフが関与できないことも課題として挙げられます。


一方で、難病に対する治療法の開発は進んでおり、様々な疾患に対する治療薬が厚労省に承認されています。多系統萎縮症も「治療可能な難病」へと変わりつつあります。そのため、リハビリテーション治療方法の確立も今後の展望であり課題と言えるでしょう。



【Impressions】


少しボリュームが多くなってしまいましたが、病期による違いや神経難病患者でしばしば見られる機能障害について触れてきました。

症状の進行に伴って生じる課題などは予め想定し、先に対応方法を決定するという流れは昨今で言うACPの考えと似ているように感じますね。

難病に対する治療法も日々進化し、リハビリテーション専門職である我々もそれに併走する形で進化していきたいところです。



●明日からできること!


・病期、症状別に見て今度どうするかの対応を予測して考えておく。

・最新の治療法についての知識を得ておく。



文責:テツ@永遠の若手理学療法士




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