がん患者の病期別緩和ケアにおける理学療法士の役割
中野治郎 福島卓矢 石井瞬
Journal of Physical Therapy Vol.40 No.10
2023.10 P876〜885
①病期別緩和ケアにおける理学療法士の役割
②診断期の緩和ケアにおける理学療法
1)生活指導
2)セルフマネジメント指導
3)精神・心理的サポート
③治療期の緩和ケアにおける理学療法
1)痛みへの対処
2)運動療法による症状緩和
3)リンパ浮腫と痺れお対応
4)セルフモニタリング
④終末期の緩和ケアにおける理学療法
1)ADLの向上
2)ポジショニングとマッサージ
3)物理療法
4)家族の指導
緩和ケアはがんの病期に問わず、早期から予防に関わるとされている。理学療法士も診断期、治療期、終末期のすべてにおいて緩和けあに関わることが求められる。
しかし、現状はがん患者に十分な理学療法が行われてるといえ言い難い。理学療法士の役割について病期別整理している文献である。
現在の緩和ケアはがん病期を問わず、特に早期から予防的に関わることとされている。診断期のがん患者にたいしても緩和ケアは必要に応じて行う。理学療法の主な目的は機能回復・維持であり、内容はがんの種類によって異なる。①身体機能の維持・改善②日常生活動作の維持・改善③廃用症候群の予防・改善④痛み・倦怠感などの身体症状軽減⑤浮腫の改善を目的に理学療法が処方される。
診断機の緩和ケアにおける理学療法としては、患者は自立し、体力もある程度維持されていることが多く、手術前の運動指導、患者教育を行うのが役割である。運動自動は指導が過度にならないよう注意し、手軽にできる散歩や買い物などを生活リズムに取り入れ、身体活動量を確保できるよう指導する。
治療期の緩和ケアにおける理学療法は、がん患者の体力とADL低下し始め本人や家族が不安になる、痛み、呼吸困難、嘔吐、食欲不振に化学療法の副作用もあり身体症状が増悪してくるため、適切な運動療法を行い、症状軽減をはかる役割である。
がん性疼痛に対しては、痛みが起こりにくいADL指導、TENSを実施する。この時期も身体症状に対し運動療法は有効であり、修正ボルグスケール4、最大強度の40%程度の低強度運動で週5回以上高頻度で行うと症状軽減すると報告もある。
がんの種類や治療によってはリンパ浮腫や痺れが問題となり、圧迫療法、運動療法、ドレナージを行う。不安や抑うつといった精神症状もあり、運動療法を通して自己効力感を高めさて自信を持たせる。
終末期の緩和ケアにおける理学療法は、体力低下が著名となり、ADLに使用を来たし、臥床時間が長くなり、他者への依存や家族負担増加や不安が増すことが多いため、身体機能回復にこだわらず、身体的・精神的な苦痛を減らすことを第一に考える必要がある。
のこされた能力を必要な能力を明らかにし、可能な目的を設定しADL拡大をはかる。
腹部や背部の痛みがしばしば生じるため、ポジショニングやマッサージが有効である。がん性疼痛に対して腫瘍の直接的な刺激を避ければ温熱療法やTENSは実施可能である。
理学療法の目的と内容については、病気の進行状況や身体症状、本人の訴えに柔軟に対応させていくことが必要である。
病期に沿って理学療法の役割が記載されているため、読みやすく流れもわかりやすかったです。どの病気の患者なのか当てはめ、すぐに臨床に取り入れられる内容でした。
がん患者の理学療法について分かりやすく、明日からでも臨床で活用できる内容となっています。是非読んでみてください。
記事:琢麻